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2016年10月31日

認知症Q&A 第9回 食生活の改善を 認知症の予防法(1) お答え 大場敏明さん(医師)

  認知症の予防法は、市民対象の講演会などで一番関心が高いテーマです。私は認知症の予防に大事な4項目((1)食事(2)運動(3)嗜好品(4)生活態度と趣味)と、生活習慣病対策の重要性をお話ししています。これは公益財団法人「認知症予防財団」の「予防の10カ条」を参考にしたものです()。今回は食生活の改善について説明します。

表

野菜・魚を多く

 「医食同源」といわれるように、病気の予防に最も大切なのが食事です。九州大学の研究によると「適度な摂取カロリーの範囲で、大豆・豆製品、野菜、海藻、牛乳や乳製品を多めに摂り、ご飯は少なめ」というメニューの組み合わせが、認知症予防に効果的とのことです。このメニューの食生活の人たちは、一般の食生活の人に比べて認知症のリスクが3割あまりも低かったそうです。
 野菜や果物に多く含まれるビタミンCやEは抗酸化物質と呼ばれ、脳血管の老化を防ぎます。アセロラ・いちご・柿・キウイフルーツにはビタミンCが、ほうれん草・春菊・玄米・ごま・納豆・アーモンド・コーン油にはビタミンEが多く含まれています。
 しかし、果物や豆類などはカロリーも高いため要注意です。落花生が体に良いだろうと毎日食べて、持病の糖尿病が悪化して認知症を発症した患者さんもいました。

糖尿病で血糖値が高いと脳血管や脳神経に障害が起こりやすくなり、脳血管性認知症を発症しやすくなる

EPAやDHAについて

 動脈硬化を予防するEPAやDHAの不飽和脂肪酸は、認知症予防にも効果があると言われています。不飽和脂肪酸は魚(特に青魚)や亜麻仁油、エゴマ油に多く含まれます。
 ただし、DHAはその濃度に注意が必要です。濃度が低い場合は脳細胞死の割合が減りますが、高いと脳細胞死の割合が増すとの実験結果もあり、摂り過ぎは禁物です。
 テレビなどで最近「認知症予防にはココナッツオイルが良い」と紹介され、ちょっとしたブームになっています。ココナッツオイル主成分の中鎖脂肪酸が認知症に効果があると言われていますが、真偽は確かではありません。中鎖脂肪酸は飽和脂肪酸の一種です。血中に飽和脂肪酸が増えると動脈硬化の原因になるので注意しましょう。
 ニュージーランドの心臓協会は「ココナッツオイルは、毎日の料理に使用する植物油としては勧められない。これまで通り不飽和脂肪酸の植物油脂を使用するべき」との見解を発表しています。

よく噛むこと

 消化器疾患や生活習慣病、肥満の方たちに、私は「食べ物を30回は噛みましょう」とお勧めします。良く噛むことは、認知症予防にも効果的なのです。
 歯科医学会でも、健康な歯と認知症の関係が注目されています。物を噛む行為は脳を刺激し、感覚や記憶・思考をつかさどる部位の活性化につながります。
 東北大学が高齢者の歯の残存数と認知症の関連を調査したところ、(1)健康な人の残歯数は平均14・9本、認知症疑いの人は9・4本(2)残歯数が少ない人ほど記憶の中心部ともいえる海馬などの容積が少ない、との結果が出ました。
 他の研究でも残歯数が20本以上の人と比べ、歯が0本で義歯もしていない人の認知症リスクが1・9倍も高いとのデータがあります。また、広島大学は正常なマウスと歯のないマウスを比較し、「無歯例ではアルツハイマー病の原因と考えられるアミロイドβタンパクが沈着し、記憶や学習に関わる海馬の細胞数が減っている」との研究結果を発表しました。歯を大切にして良く噛むことが、認知症の予防に大切です。

いつでも元気 2016.11 No.301

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