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2016年11月8日

相談室日誌 連載417 複合的な相談が増加、支援 すり抜け・置き去り防ぐには(愛知)

 意思決定の支援は、当事者に寄り添ってすすめることが不可欠ですが、医療情勢も厳しく、十分な時間や体制の確保は簡単でありません。
 食欲不振の精査目的で当院に入院した八〇代のAさん(女性)は要介護3で、娘さん(五〇代・無職)と二人暮らしです。数年間から他院に通院し、ピック病と診断されていました。
 検査では「異状なし」。食欲不振は加齢と認知症が原因とされましたが、ほとんど食べない状態が続き、栄養確保の検討が必要でした。また在宅介護にも課題が。担当ケアマネジャーから「家族介護は限界だが経済面でサービス拡大が困難だったこと、娘さんは繰り返し説明が必要で決断が不得手、意思決定をケアマネに託そうとすることがある」と情報提供がありました。
 (1)栄養確保の意思決定、(2)経済問題、(3)今後の療養先の支援が必要で娘さんと面談すると、世帯収入は母親の年金だけで各種の滞納があること、徘徊で目が離せなかった苦労を語りました。また「食べられない事も胃瘻も、看取りも認めたくない。食べられるようになってもらい、もっと思い出を作りたい」とも希望しました。
 娘さんは、未体験の事柄の予測や理想と現実の調整、計画などが苦手。市のサポートセンターに家計管理や就労の相談歴があったことも分かり、娘さんにも支援が必要と思われました。
 そこで「こうすれば食べられるようになるのでは?」と娘さんが考える方法を試すことを繰り返す形で意思決定を支援。娘さんは母親の状態を徐々に受け入れ、胃瘻造設を決めました。
 市のサポートセンターにも再度相談し、担当の精神保健福祉士と連携し、家計管理や就労アドバイス、生活保護の申請も視野に入れ、療養先の検討をすすめました。Aさんは、胃瘻造設し療養型病院に転院、娘さんにはサポートセンターが支援を継続することに。
 複合的な問題を抱える事例は増えています。入院患者の支援は入院期間中、どこまでできるか葛藤することも少なくありません。SWには意思決定に限らず、必要な支援のすり抜け・置き去りを防ぐべく、アセスメント力向上と通訳・権利擁護機能があると改めて自覚しました。

(民医連新聞 第1631号 2016年11月7日)

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