いつでも元気

2004年2月1日

特集1 もう一つの世界/フランス発 戦争にノン!平和と連帯の欧州を

 写真と文 山本三春

 「戦争にノン! 平和と連帯の欧州を!」「USA=グローバル植民地主義」「もう一つの世界、もう一つの欧州を!」
 昨年末、こんな叫びがパリの街にこだました。冬空に歌が舞いあがり、横断幕がひるがえる。女性たちの笑顔がはじけ、仮装した若者たちも踊りながら歩く。 その数、じつに一〇万人。いま世界的に注目を集めている新しい奔流の大デモだ。

アルテルモンディアリスト

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トラクターには「遺伝子組み替えトウモロコシはご免だ」

 彼らの名は「アルテルモンディアリスト(もう一つの世界主義者)」。集会とデモは第二回「欧州社会フォーラム」。
 国際NGO、人権、平和、女性、農民などの各種団体、労働組合、知識人ら幅広い進歩勢力が国境をこえ、一致点で展開する運動である。その一致点とは、 「大企業本位・大国本位の世界ではなく、平和で民主的な、市民本位のもう一つの世界を」。イラク戦争前夜に三〇万人の反戦デモを敢行し、国際政治に影響を 与えたのも彼らである。
 フランスでは最近、彼らがメディアに登場しない日はない。「彼らは何者?」「なぜこれほど人々を惹きつけるのか」(公共テレビ)と特集を組み、国民的人 気を誇る農民連合のジョゼ・ボヴェ氏や、国際的市民団体「アタック」創始者でルモンド・ディプロマティク紙記者のベルナール・カサン氏ら指導者は、討論番 組にひっぱりだこだ。

グローバル化にも「2つの道」

 この運動の源は、いまから七、八年前に遡る。当時、先進諸国のグローバル化(世界化=フランス語ではモン ディアリザシオン)戦略によって、国境をこえた経済戦争はすでに激化の一途をたどり、生産拠点の国外流出やリストラで失業が増大。しかも市民不在の欧州通 貨統合で、医療や福祉まで脅かされていた。
 いち早くこれに気づいたフランスの労働者・市民団体が、各分野で激しい反対闘争を開始。結果、九七年にはフランスに久々の左翼連合政権が誕生した。
 ところが左翼政権は、人びとの期待を裏切ってグローバル化路線を続行。その間にアメリカの強引なグローバル化は、とうとう「9・11」テロ、つづくアフ ガン・イラク戦争という最悪の結果にいきついた。フランス左翼政権も失望を買い、〇二年に崩壊してしまった。
 この激動のなか市民・労働者・知識人はグローバル化にも「二つの道」があることを自覚。世紀末を境に、大企業・大国中心のグローバル化に対決しつつ、た たかい自体をグローバル化して民主的対案をつきつける方向へと発展を遂げる。
 〇一年、カサン氏らを中心に、ついにブラジルのポルトアレグレで第一回「世界社会フォーラム」が組織された。アルテルモンディアリストの誕生である。

たたかう奔流を自分たちで

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イラク戦争以来、虹のピース旗が広がった

 以来「世界社会フォーラム」は毎年開かれ、〇二年からは大陸別フォーラムも始動。フィレンツェで成功した第一回「欧州社会フォーラム」に続き、〇三年はパリで第二回「欧州社会フォーラム」が開催され、冒頭のデモが出現した。
 いまのところ、この運動がどこまで発展するかは不明。「ピンからキリまでいる」「政治につながらない」との批判もある。だがカサン氏は「運動のうねりで 政治を動かすことこそ大切」と反論する。アメリカの食料支配に反抗してユニークな闘争を展開するボヴェ氏も、「自分はエギュイヨン(駆り立て棒)。運動の 力で政党を動かす」と主張している。
 政党に蕫お任せ﨟するのでなく、自分たちでたたかう奔流をつくる。これがアルテルモンディアリストの矜持であり、時代の要請なのかもしれない。
 そんな彼らの第四回「世界社会フォーラム」が、一月一六日からインドのムンバイで始まる。アジアでもこの奔流がほとばしるだろうか。
(パリ在住ジャーナリスト)

いつでも元気 2004.2 No.148

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