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2016年12月6日

知る見る “安倍社会保障解体”(2)入院時の医療 全ての入院患者から「居住費(水光熱費)」を徴収

 安倍政権がすすめる「社会保障解体」を読み解く連載。二回目は、一般の入院患者から居住費(水光熱費)を徴収する問題です。

 政府は療養病床に続いて、一般病床や六五歳未満の療養病床から、居住費(水光熱費)の名目で三二〇円を徴収しようとしています。療養病床の六五歳以上の患者も、現行の三二〇円から三七〇円に引き上げる計画です。法案提出は二〇一七年の予定です。
 また、一般病床は今年四月に食費が値上げされ、一八年にはさらに一食一〇〇円アップの予定です。居住費まで徴収されると、食費と合わせて一日一七〇〇円の負担です。医療費のほかに、月五万一〇〇〇円もの負担です()。

表

“生活の場”の説明は破綻

 「居住費」は〇五年に初めて介護施設(入所)で導入されました。当時の政府の説明は、「在宅の利用者は水光熱費や家賃がかかる。在宅と施設の利用者の負担の公平を図る」というもの。その後、療養病床の六五歳以上にも導入されました。
 千葉健生病院のSW・中村久和子さんは、「“生活の場”だからという理由の居住費を、なぜ一般の入院患者にも適用するのか。入院は治療が目的で、患者には自宅の維持費もある。治療が必要な入院期間かどうかを判断するのは医師であり、“○日以上の入院で生活の場になる”などと一律に決めるべきではない」と話します。
 昨年五月には、小池晃参院議員(共産)がこの問題を国会で取り上げました。小池氏はこれまでの政府の説明を踏まえ、「今回は長期療養病床でもない。今までの理屈でも全く説明がつかない」と追及しました。この質問に厚労省は「終(つい)のすみかとは違う観点」と答弁し、論理破綻を認めています。

お金の有無が治療に直結

 すでに〇六年から居住費(一日三二〇円)が徴収されている療養病床の六五歳以上の患者について、中村さんは「家族から『療養病床に入院するなら、借金を考えないといけない』『治療の内容や入院日数を減らせないか』という相談もある」と言います。一方、「民間の医療保険に入っていて助かった」という患者も。「公的保険で受けられる医療は年々狭まり、足りない部分を民間保険が補っている状態。これで国民皆保険と呼べるのか疑問です。国保料すら払えずに滞納している人は民間保険に入れるはずもなく、医療にアクセスできずに手遅れになる人を増やす」と懸念します。
 一〇月二一日の社会保障審議会医療保険部会では、この問題が議題となりました。「(介護に対し)医療は入院して治療するためのもの。年金支給年齢に届かない六五歳未満の入院患者は非常に苦しい。入院は大変な負担。この提案は間違っている」(日本医師会)「入院時生活療養制度創設の際に、医学的管理のもとに食費・居住費を保障する必要があるということが書かれている。賛成できない」(連合)などの反対意見が出ています。(丸山聡子記者)

(民医連新聞 第1633号 2016年12月5日)

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