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2016年12月6日

フォーカス 私たちの実践 「ゴミ出し」調査 香川・介護支援センター協同 削られる介護給付の中で高齢者のゴミ出しに着目

 ゴミを分別し収集場所まで持って行く「ゴミ出し」は、在宅で生活する上で必須です。香川・介護支援センター協同では、介護計画を立てる中で「ゴミ出しで困っている利用者がいるのでは」と着目。利用者の状況を調査し、介護サービスの利用や地域の支援で解決を図りました。第一二回学術・運動交流集会で、ケアマネジャーの大西一江さんが報告しました。

 介護支援センター協同では、四人のケアマネジャーが高松市内に住む利用者一三五人を支援しています。介護保険制度の連続改悪で給付削減と利用者負担増がされる中、「利用者がいま、困っていることは何か」と考えた時、ゴミ出し問題が浮かびました。
 ゴミ出しで障害となるのは、収集場所までの距離、ゴミの重さ、分別の細かさなどです。高松市では、ゴミの収集場所を地域の戸数に応じて設置しており、住居が密集している地域では比較的近くにありますが、散在している地域ではかなり離れた場所になる場合も。また分別が細かく指定され、認知症では困難と思われました。

ゴミを持って歩けない

 利用者の病状や生活状況を改めて確認し、解決策を探りました。
 九〇代女性のAさんは独り暮らし。下肢を骨折後、歩行が不安定で、一五〇メートル先にある収集場所へ行くのが困難でした。幸い地域の収集時刻が遅かったため、訪問介護を九時三〇分に入れることで解決しました。しかし介護度は要支援2、生活援助の切り捨てがすすめば、またゴミ出しができなくなります。
 八〇代男性、要介護2のBさんは下肢筋力低下で車いすを使っています。二人暮らしで、妻は持病で重いものが持てません。収集場所までは五〇〇メートルあり、坂道や交通量の多い道路を通らねばなりません。近隣住民や家族の助けで解決しましたが、いつも回収できるわけではなく課題は残りました。
 九〇代女性、要介護1のCさんはひとり暮らし。脳梗塞後で歩行が不安定、転倒も多く重い物は持てません。退院時に地域の医療生協組合員に援助を依頼し、訪問介護と協力しゴミ出ししています。

表

必要な解決策は

 解決に有効だったのは、医療生協組合員の協力でした。組合員からも「気になる人はいるが、何をどこまで手伝えばいいのか」との声があったため、ゴミ出しボランティアを依頼しました。支援可能な範囲をあらかじめ確認し、トラブルも起きず続けられています。
 なお、デイサービスや病院のリハビリスタッフにこのゴミ出し問題を伝えたところ、「盲点だった」と返ってきました。カンファレンスや日常の情報交換で利用者の問題を伝え、リハビリ内容に反映してもらうようになりました。
 根本的な解決には、自治体の支援制度が必要です。必要な世帯に戸別収集を行っている自治体を調べると、香川県内では丸亀市など三カ所のみ、全国でも一〇三の自治体しかありませんでした。ボランティアのゴミ出しも、全国で一〇件ほどしか見つかりませんでした。特に地方に少ない傾向にありました。
 戸別収集を行っていない香川県の市町村全てに「ゴミ出しができない高齢者をどうするのか?」と問い合わせもしてみました。一カ所を除き「対策はありません。訪問介護を利用してはどうか」との回答でした。要支援の利用者は、制度改悪で介護保険の生活援助サービスから今後外される可能性があるため、それでは解決できません。自治体に実情を伝え、戸別収集の必要性や要支援の生活援助切り捨ての問題を訴えています。

 「ケアマネジャー同士で情報交換していると、利用者の抱える困難に気づく」と大西さん。自身が支援している利用者の問題を他のスタッフに伝えると、「私の利用者も同じ事で困っている」と話題になることがあります。
 いま気になるのは「掃除」。高齢者には掃除機が重いのです。「現役世代のスタッフには当たり前でも利用者にはどうか―。意識するよう心がけています」と大西さんは語りました。

(民医連新聞 第1633号 2016年12月5日)

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