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2017年1月24日

フォーカス 私たちの実践 病棟でケアを統一 大阪・耳原総合病院 緩和ケア病棟 口の健康の視点 口腔ケアで 「食べる」「話す」を最期まで

 終末期をより良く過ごすためには、口腔ケアも重要です。大阪・耳原総合病院の緩和ケア病棟(二三床)では、口腔ケアを統一し、患者の口腔環境の維持、改善を図りました。第一三回看護介護活動研究交流集会で、同病棟の「口・皮ふグループ」が報告しました。

 終末期の患者は、全身状態の悪化に伴い口腔内環境も悪化します。悪化してから侵襲的な対処をしては、患者にとって大きな苦痛です。口腔ケアを早くから行い継続することで、苦痛が少なく、その人らしい時間を長く過ごしてもらえると考えました。同院緩和ケア病棟では「口腔ケアグループ」を立ち上げ、二〇一二年からとりくみを始めました。

■方法学び道具も工夫

 まず、スタッフ間でバラバラだった口腔ケアの方法や道具を統一することが重要でした。
 始めに粘膜ケア・口腔ケアの学習会を病棟内で企画。講師は法人内の歯科医師と歯科衛生士に依頼しました。口腔内は湿潤環境を保つことが重要で、薬剤や洗口液に加えて、水をスプレーボトル(下写真)に入れて使う方法を学びました。医科歯科連携の充実が重要であることも再認識しました。
 院長とつながりのあった兵庫医科大学の教授の協力をいただき、回診の見学も。口腔ケアの正しい手順は上から下に行うこと、さらに、落とした汚れを飲み込まないよう、最後にきれいに拭き取ることがポイントだと分かりました。
 ケアの道具も統一。口腔ケア用ジェル、口腔ケアスポンジ、洗口液の三点。ジェルは、学習会で殺菌力が優れていると紹介された成分、ヒノキチオール含有のものを採用。洗口液は、抗炎症作用のあるアズレン散一・五グラムと、保湿効果のあるグリセリン一二ミリリットルに一〇〇ミリリットルになるまで水を加えたもの。グリセリンの甘みで唾液が出て、潤いが持続します。患者さんに試してもらうと、「辛みがなく、甘いけど後味がすっきり」と好評でした。
 口腔内の湿潤環境の維持にはスプレーボトルの水や洗口液を使い、看護師が訪室のたびに口腔内に噴霧することにしました。水は一日一回交換、ボトルは患者ごとに用意し、退院時に廃棄します。

■定期的に観察

 口腔状態の観察は、入院時から行います。退院まで口腔状態の把握とケアが継続できるよう観察項目を統一()し、アセスメントシートを整備。記録は、ベッドサイドで簡単にできるよう、電子カルテと繋がっているワードパレットを使いました。口腔状態の評価のタイミングは、入院時、そして週に一度の口腔ケアラウンドで繰り返し行っています。
 口腔ケアラウンドを緩和ケア病棟独自で行っていた時はなかなか定期的にできない悩みもありましたが、二〇一五年に病院の口腔ケアプロジェクトができ、歯科衛生士が担うことで定期的に行うようになりました。病棟スタッフも同行し、観察やケアの指導を受け、技術向上を図っています。

*     *

 口腔ケアグループ発足までは「頻繁に行うと患者さんも辛いだろう」と、口腔ケアに積極的になれませんでした。しかし、話せなくなる、食べられなくなるなど、ケアしない方が辛いのだと、学習を通じて認識を改めました。
 導入当初は看護師もとまどっていましたが、四年が経ち口腔ケアは当たり前になりました。食事の後の歯磨きは普通のこと。それは終末期患者でも同じです。患者さんや家族からは、「食べやすくなった」「口臭が気になりにくくなった」と聞かれます。
 今後の課題は、口腔内に腫瘍がある人のケアです。出血や痛みがありケアしにくい状態ですが、放置しては悪循環。これを断ち切る方法を検討中です。
 緩和ケア病棟は、患者がその人らしい最期を迎える支援を行うところです。話すことや食べることは、人として生きるための大切な営みです。より良い時間を過ごせるよう、試行錯誤しながら支援を続けます。


観察項目
   歯磨き:自立/介助
   うがい:自立/介助
   義 歯:あり/なし
義歯の不具合:あり/なし
   舌 苔:あり/なし
   乾 燥:あり/なし
   口内炎:あり/なし
   痛 み:あり/なし

(民医連新聞 第1636号 2017年1月23日)

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