くすりの話
2004年4月1日
くすりの話 70 米国くすり事情あれこれ(3)
米国薬局見学の話の最終回、今回は処方せんの制度の違いなどをお話します。
1枚の処方せんで何回も調剤
米国には、一度医師が出した処方せんが、くり返して使える「リフィル処方せん」という制度があります。「リフィル(refill)」とは「詰め替える、 補充する」という意味。見学にいったカイザー病院では、同じ処方箋で1年から1年半の有効期間に、6回まで調剤できるとのことです。何回使えるかは医師が 決めて処方せんに明記されます(麻薬などは1回だけ)。
患者さんは、リフィル処方せんをいちど薬局に預けると、その後は、薬局に電話で調剤を依頼し、後日受け取りにいくのです。薬局では、患者さんから依頼を 受けると、主治医に電話で確認をとって処方薬を調剤します。
プラスチックのビンで
調剤室の棚には、依頼を受けて調剤した薬が保管してありました。日本のように朝昼夕ごとなど分包はされず、ふつうは種類別にプラスチックのビンに薬が詰められています。また、粉薬が少ないのも特徴的です。
1枚の処方せんで処方される薬の種類は1~2種類です。カイザー病院では、1枚の処方せんに処方される薬は平均1.5種類とのことでした。
患者さんは、日数分の錠剤やカプセルが詰まったプラスチックのビンを1~2本持って帰るということで、スーパーのレジ袋に何種類もの薬をいっぱいにして 帰る日本での風景とはだいぶん違います。
健康食品、一般薬への依存
サンフランシスコ視察の最終日、会員制の大型スーパーに案内されました。その一角にクッキーやチョコレートなどの食料品と同じように、あらゆる一般薬と大包装のビタミン剤など健康補助食品がびっしりならんでいました。
米国では一般薬は薬局以外でも販売が自由にでき、その販売に薬剤師はまったく関わりません。
米国の公的保険は、老人・障害者対象の、国の保険(メディケア)と、低所得者対象の、州政府の保険(メディケイド)しかありません。保険を持っている人 の多くは民間保険や企業保険に加入していますが、保険でまかなわれる範囲は保険料により制限されます。そのため、健康への危機感から健康補助食品に頼り、 具合が悪くなれば市販の薬を多用するという、大変ゆがんだ健康志向、薬依存の風潮がつくられています。
薬の選択を誤ったり、飲み方を間違えて事故になっても、それは消費者の「自己責任」となるのです。
日本でも米国と同じ方向にすすんでおり、気がかりです。
いつでも元気 2004.4 No.150
この記事を見た人はこんな記事も見ています。