医療・看護

2017年2月21日

相談室日誌 連載422 未治療の糖尿病を抱えた父子家庭のAさんを通して(京都)

 Aさんは高血糖高浸透圧状態で救急搬送され、B病院で急性期治療をした後、血糖コントロールとリハビリ目的で当院へ転院しました。
本人は、入院直前まで腰痛がひどく、時に寝たきりに近い状態が続いたが、痛みと付き合いながら何とか自宅生活していたと話しました。
 それまで定期受診はせず、糖尿病は未治療でした。入院中にインスリンを導入することに。ところが、Aさんは常に「何とかなるやろう」という精神。「インスリンの練習はしなくても、家に帰ったら自分でできると思います」「それより早く退院させてほしいな」が、口癖でした。インスリンは病棟看護師が打たなければならない状況がしばらく続いていました。
 Aさんは妻とは死別し、高校生の長男と二人暮らし世帯です。唯一の親族の姉も遠方に居て、長年連絡も取っていないとのこと。身寄りはないに等しく、父子家庭の親子が二人三脚でがんばってきたことがお話の中でもうかがえました。長男には学業もあります。日常的にAさんの生活支援をするには限界があると判断し、介護保険を申請し、訪問診療と訪問看護、訪問介護で確実にインスリンが投与できるようサポート体制を組みました。また、入院中に本人が自己注射の手技を覚えられるよう、病棟看護師主体で練習を続けた結果、Aさんも「インスリンを打たないといけない」と気持ちが変化し、自主的にインスリン投与ができるようになりました。そして、無事退院されました。
 最近、家族関係が希薄だったり、地域とのかかわりの乏しいケースを散見します。そして、「入院」を機に抱えていた課題があらわになる事も多々あります。もっと早い段階で察知し、予防策が取れるような地域ネットワークがなお必要だと考えさせられます。また、病院のSWとして勤務している私自身、地域へもっと出ていく必要性をあらためて感じました。
 医療とつながるべき人が、様々な理由で医療とつながれていないことが多々あると感じています。受療権は誰にでもある権利です。医療が必要な人が医療を受けられるよう支援することが私たちSWの役目だと考えています。

(民医連新聞 第1638号 2017年2月20日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ