民医連新聞

2017年3月7日

相談室日誌 連載423 障害年金申請までの大きな「壁」(岐阜)

 難病を患っている患者さんに社会保障制度の案内をしていた時、付き添っていた夫の反応に違和感を覚えました。障害年金の申請について説明している間、初めて聞いたかのような表情をされていたのです。患者さんの夫は透析患者です。人工透析療法施行中の人は障害基礎年金の二級に認定されることになっています。
 後日、透析室にその方を訪ね、話を聞きました。予想通り、透析による障害年金の申請はされておらず、早急に手続きする必要があると分かりました。幸い、一〇年近く前の初診日についても確認が取れたため、障害年金取得に向けて大きく前進しました。
 ところが「自営業の経営がたいへんで、年金保険料は途中から支払っていない」というのです。嫌な予感がしました。妻の障害年金も調べたところ、残念なことに保険料の納付要件をほんのわずかに満たさないことが判明しました。妻は難病で苦しんでおり、夫の仕事も手伝えず、生活がたいへんになりつつありました。
 年金制度は社会保障制度ですが、枠組みは社会保険制度です。医療や介護保険と同様、保険料を納めていない加入者には重いペナルティーが課されることになっています。しかし、高すぎる保険料を一定期間納めていなければ、障害年金を受給できないという事実を知っている人は一体どれくらいいるのでしょう? また障害年金の受給要件の一つに初診日要件がありますが、場合によっては何十年も前の診療録から診断日を確定しないといけないことがあることを知っている人はどれくらいいるでしょうか? 病気や障害を負った人たちに、日本の社会保障制度は、周知が不十分な上、申請のハードルも高く、非常に冷たいものに感じました。
 わずか一~二年程度の保険料未納のために、受給要件を満たせず、生涯にわたって障害年金を受けられない。このことをご本人に話した時「納めてないものは仕方ないね」と自分の責任であるかのように言いました。その時の表情に、とても悲しい気持ちになりました。その後、身体障害者手帳や福祉医療制度にはつなぎ、障害年金や生活の相談を続けています。

(民医連新聞 第1639号 2017年3月6日)

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