介護・福祉

2017年3月7日

22 男の介護 千代野さんとの奮闘記 [著・富田秀信] 腕の中で

 予想外の今号です。急逝とはこの事です。
 昨年12月19日は妻・千代野の月1回の検診日でした。主治医と「異常ないですね。体重も2キロ減りましたね」とのやりとりが午後6時過ぎ。検診日恒例の、病院の目の前の中華料理店での夕食。普通に食べて店を出た午後7時頃、「お父さん、戸が閉まらないわよ」と妻、私「ああ~自動だから良い」。これが最後の会話でした。
 いつものように、妻の手を引き10mも歩いたでしょうか、突然崩れ落ちるように倒れこみました。それは何かにつまずいた感じと違っていました。道路に直撃しないよう右手で必死にささえましたが、頭を少し打ち、何より口から泡を吹くようでした。動かしてはダメと、頭を腕に妻を抱き、通行人に「病院に知らせて!」と頼みました。やがて、ストレッチャーが来て、明るい病院内へ。妻の顔色はありませんでした。
 20~30分後、医師からの一報は「厳しいです」。数分後に呼ばれ、「心臓マッサージを続けたが、脈、心臓が回復しない。心肺停止状態です」。ついさっき検診で妻を診た主治医を含め、複数の医師と看護師が努力してくれましたが、午後7時46分絶命。死因は心室細動との事。最後の会話からわずか1時間弱の事でした。
 20年前は、妻が自宅で倒れていたのを後から知り、万が一の場合、「夫婦のあいさつもなく…」と後悔しましたが、今度はしっかり私の腕の中。「よく20年間生き続けてくれた」と、感謝の念でいっぱいです。
 昨年2016年は、妻が倒れて20年の節目の年でした。夫婦となって42年間、健常時代22年間、障害時代20年間の、「二人の千代野」と暮らしてきました。障害者になって、人から励まされ、しだいに人を励ます立場への変化を感じてきていました。これからは、「千の風」となって、きっと我々を見守ってくれるはずです。


とみた・ひでのぶ…96年4月に倒れた妻・千代野さんの介護と仕事の両立を20年間続けた。神戸の国際ツーリストビューロー勤務

(民医連新聞 第1639号 2017年3月6日)

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