いつでも元気

2004年5月1日

「専守防衛」が自衛隊の使命-「イラク派兵差し止め訴訟」起こした箕輪登さん(元郵政大臣)

「殺人罪に問われる自衛隊員が気の毒」

「自衛隊のイラク派遣は憲法九条や自衛隊法に違反し、平和的生存権を侵害する」として、元自民党衆院議員で、郵政大臣、防衛政務次官も務めた箕輪登さん(80歳)が一月二八日、国を相手に派遣の差し止めと慰謝料一万円を求める訴えを札幌地裁におこしました。

自衛隊員から激励の電話が

 箕輪さんの提訴は、全国各地各層から大きな反響を呼んでいます。
 道内では弁護士の四分の一にあたる一〇九人が弁護団に参加しました。地元小樽市民をはじめ全国から、激励や講演などの依頼があいついでいます。
 「連日いろいろな声をいただいていますが、一番感動したのは二人の現職自衛官からの電話です。もちろん匿名だったけれど、話の内容でどこの基地の人かは 推測できました。『自分は日本国を守るためならと思って入隊した。いままで隊で受けた教育からいってもイラクに派兵されるなどというのは納得がいかない』 『戦闘状態にあるところへ出ていくのは契約違反だ。入隊時にそんなことは話されていない』などというものでした」

「武力行使」禁じる憲法に違反

 箕輪さんは「自衛隊は合憲」の立場をとっています。その箕輪さんが提訴に踏み切ったのは、「イラク派兵は憲法九条や、自衛隊設置の根拠である自衛隊法に反する」という信念からです。
 「そもそもわが国の憲法は『国際紛争を解決する手段』としての『武力による威嚇』『武力の行使』を禁じています。ですから自衛隊は、自衛隊法で『直接侵 略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務』とするという厳格な条件がついた『専守防衛』の部隊とされてきたのです。自衛隊法のどこを見たっ て『海外派遣』などとは書いていません」
 「自衛隊が武力行使できるのは日本が武力攻撃を受けた防衛出動のときだけなんです。イラクから日本が攻撃されましたか? 小泉さんは装甲車や無反動砲、 機関銃など『武力行使』できる重装備でイラクへ自衛隊を派遣しました。いくら『正当防衛に使う』といってもこれは通じません。自衛隊法でいう『武器使用』 はピストルまでです。石破君(防衛庁長官)、小泉さんは武力行使と武器使用の違いもわかっていない」

派兵反対の国民運動を

 箕輪さんは、自衛隊員への思いも語ります。
 「現職自衛官と電話で話した夜は一晩眠れなかった。総理大臣、防衛庁長官が自衛隊員に人殺しの命令を出している。まちがった指令をしている。しかし、自 衛隊員は従わなければならない。命令されて行動した人間が殺人罪に問われる、罰せられるんですよ。
 北海道の自衛隊が主力部隊で、自衛隊員も道民ですよ。気の毒じゃないですか。『とにかく元気でいってこい』みたいな声もありますが、これじゃ昔の出征兵士の見送りと同じです」
 十数年前に脳梗塞で倒れ、懸命のリハビリで回復した箕輪さん。言葉をかみしめるように話します。
 「裁判は長いからね。その間に自衛隊が人に危害を与えるようなことにならなければいいが、と思っているんです。早く裁判で派兵を止めさせる結論を出して ほしい。そのためには国民的な運動をおこさないとね。自衛隊は憲法に違反しているという人も、自民党びいきも、共産党びいきも、憲法が保障する平和な国民 生活をまもるために」
 多くの民医連職員が派兵反対にとりくんでいることを紹介すると、箕輪さんは「尊いことです」と激励してくれました。
   聞き手・佐藤昭平(道東勤医協本部)


生命を大切に思う医師として

勇気ある行動に賛同署名広がる

 箕輪さんが単身提訴に踏み切ったことに賛同の声が広がっています。箕輪さんはもともと医師。医師・歯科医師のなかでは、賛同の署名運動が始まりました。
 呼びかけ人の一人である多田崇子医師(勤医協月寒医院名誉院長)は、「箕輪先生と私の夫(故多田光雄さん・日本共産党衆議院議員)は、同じ時期、同じ選 挙区で争ったいわばライバル。でも箕輪先生は『国の一大事に、自民党も共産党もない。政党の枠を越えて手を組まなければ』とおっしゃって、私たちが賛同署 名を始めることに大変感激されました。生命を大切に思う医師として見過ごすわけにはいきません」と元気いっぱいです。
 すでに署名は百人をこえ、自民党後援会長や元医師会会長などからも、「勇気ある行動に感激」と熱い思いが伝わるメッセージがたくさん寄せられています。
 四月一七日には、名古屋大学病院で研修中のイラク人医師を招いた講演会が開催されます。箕輪さんにゲストとしてご挨拶いただき、激励の場としたいと考え ています。 (橘晃弘=北海道民医連)

いつでも元気 2004.5 No.151

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