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2017年4月4日

「当事者」として活動するには? 現場の悩み交流し学ぶ 職場づくり・職場教育 実践交流集会

 2月10~11日、全日本民医連は「第42期職場づくり・職場教育実践交流集会」を大阪市内で開きました。職責者を中心に42県連から243人(事務局30人含む)が参加しました。(田口大喜記者)

 この交流会の獲得目標は、(1)職員育成の重要な場面である日々の医療・介護活動や経営活動、社保平和活動など仕事や活動を通じて職員が成長した経験や、職場が変化した経験を振り返り、まとめ、交流する、(2)職場責任者、管理部・教育担当者として「全日本教育活動指針二〇一二年版」や「職場管理者の五つの大切」(資料)の視点で努力・工夫してとりくんだ経験やとりくみをすすめる上での課題や悩みを持ち寄り交流する、(3)全国の多様な実践から経験を引き出し共有化し、職場づくりと職場教育の前進の契機とする、の三点でした。
 開会にあたって全日本民医連の岩須靖弘事務局次長(長野県連)があいさつ。長野中央病院の気になる患者訪問が一〇年間継続したこと、松本協立病院が行う戦争法廃止のスタンディング行動の一〇〇回記念に一七〇人が参加したことなど、長野で活発にとりくまれる実践を紹介しつつ、「全国のとりくみを学びあい、交流しよう」と呼びかけました。「民医連運動の担い手として、当事者性を発揮しよう」と提起しました。
 全日本民医連教育委員会の和田峯暢浩事務局次長が問題提起。四一回総会で提起され、四二回総会にも反映された「職場管理者の五つの大切」を紹介し、「職場管理者の育成はトップ幹部の責任」、「人が育つ職場をどのように作るのか? おおいに深めあって」と呼びかけました。
 基調講演は藤末衛・全日本民医連会長が行いました。テーマは「新しい時代と民医連、職場づくりの視点~患者・住民・他施設との共同の営みが新時代を築く」。
 会長は講演の冒頭、「民医連の職場づくり」で浮かぶ視点として、人権・憲法・綱領に加えて「対話」のキーワードを強調。暉峻淑子(てるおかいつこ)さんの著書『対話する社会へ』(岩波新書)から、「対話が続く間は殴り合いは起こらない」「戦争・暴力の対義語は対話」との言葉を引用し、コミュニケーションの重要性を語りました。
 また、先進国の健康格差に着目したWHOの戦略を示し、実践に根ざした民医連の医療理念は世界の流れと共鳴していることを説明。職場づくりのポイントを「人権の歴史を学び、目の前の患者、利用者と対話して」と語ってしめくくりました。
 指定報告は四題。栃木、奈良、鹿児島、香川からです(下項)。

悩みや苦労出し合い

 分散会では、二一班で討論しました。
 藤末会長の講演については、「対話」のキーワードが印象深かったという感想が多くありました。他にも「民医連の歴史や理念について自分の言葉で語ることが大事だとわかった」、「人権と社会保障を意識的に学習する必要性を感じた」と、積極的な受け止めがありました。
 指定報告については、「持ち帰ってまねしたい」、「職責者が学び、自覚的に職場づくりにとりくむことが大切」などといった感想が出ました。
 また、「どうすれば職員のモチベーションを高められるか?」、「職場内でスキルアップに対する意欲が感じられない」など日々の悩みも率直に出され、各事業所での実践を出し合いながら活発な意見交換をしました。
 柳沢深志・全日本民医連副会長がまとめと閉会あいさつ。全国の多彩なとりくみを激励し、各職場で実践につなげようと呼びかけました。また、「評議員会方針を学習し、今後行われる総選挙に向けて主権者意識を高くもって参加しよう」と語りました。

育ちあいの「職場づくり」に必要な8つの視点
●いつも患者・利用者、人権を守ることが中心にすわっている。事例からの学びを大切にしている職場である
●職場の使命や目標が明確になっている。職場の誰に聞いても、目標や課題について共通の認識をもっている
●決めたことをやりぬくことが重視され、やったことがきちんと評価される
●地域、職場、現場の状況や出来事がリアルかつタイムリーに共有され話題になっている
●現状変革の志がある。1人ひとりの職員に「もっと~したい」「~を良くしたい」という思いがある
●思いやりと率直な相互批判にもとづく信頼と規律がある
●個人の責任と集団の責任が明確になっている
●学習が重視されている。絶えず学ぶ雰囲気があり、1人ひとりの成長にむけて援助し、励ましあっている

職場管理者の5つの大切
(1)場づくりの「夢をかたちに」
(2)学ぶ機会の保障
(3)職場会議の開催と充実
(4)学習と「民医連新聞」の活用
(5)管理者の集団化と団結

健康職場の5つの視点
(1)個人にとって適度な質的量的負荷となっているか
(2)職員の安全・安心が保たれているかどうか
(3)技術的な研修の保障がされているか
(4)使命が明確で評価されているか
(5)ライン内・職場間・職種間で少数意見が保障され、コミュニケーションが向上しているか


指定報告から

指定報告をした四人の発言の概要を紹介します。

気になるカンファ 1人1件出し合って

栃木・大森香さん

 栃木・宇都宮協立診療所医事課の大森香さんは、週一回、事務の職場会議で行う「気になる患者カンファレンス」(気にカン)について報告。きっかけは業務に追われて患者に目を向けることが少なくなったと感じたことです。
 職員それぞれが、気になる患者の報告を一人一件以上出します。はじめは負担に思う職員もいましたが、継続することで患者の変化に目を向けるようになりました。また、患者の背景から社会問題にも視野を広げて考えるように。意見交換をする中で職員同士のコミュニケーションも円滑になり、「普段みんながどんな姿勢で仕事にのぞんでいるのかが見えるようになった」と語りました。

キラリ・ハット 誰かが評価してくれる

奈良・奥谷裕之さん

 奈良・デイサービスセンターせいびの奥谷裕之所長は、「キラリ・ハット」のとりくみを報告。「キラリ・ハット」とは、医療や介護の安全報告「ヒヤリ・ハット」をもじったもので、職員間の良好なコミュニケーションで気持ちの良い職場づくりをめざした「職員のいいところ探し」のこと。「思いを理解してもらえない」新人職員と、「若手の発想が理解できない」ベテラン職員の溝を埋めるべく二年前からとりくんでいます。
 出されたキラリ・ハットを職場会で報告すると、「誰かが評価してくれている」と実感がわき、若手職員の自信につながりました。ベテラン職員も徐々に若手の発想を受け入れるようになり、「職場の雰囲気に変化がみられ、団結も深まった」とまとめました。

ケアカフェ 全員発言で「否定せず」

鹿児島・平野慎一郎さん

 鹿児島生協病院の医師・平野慎一郎さんは「職種横断的草の根の職場づくり~ケアカフェの活動」を報告。職種の垣根を越えた関係づくりと、日ごろの相談の場を提供するねらいでスタートしたとりくみです。
 カフェをイメージした雰囲気づくりをめざし、コーヒーを片手にいつもよりちょっと真面目な話をしています。悩んでいる症例を持ち寄り、多職種で意見交換。「全員発言」「否定しない」がマナーです。「視点が広がった」「他職種の立場を考えるようになった」などの感想が寄せられ、円滑な多職種連携に欠かせない場となっています。

ヘルパーの集団化 命を守る担い手の自覚

香川・山本秀彦さん

 香川医療生協・介護福祉部長の山本秀彦さんは、「ヘルパー職員を集団化し、専門職としての意識を高めた職場づくり」を報告しました。
 ヘルパーステーションみきの職員は、年齢も経験もさまざま。ヘルパーの集団化をめざし、質の高い生活援助、食生活支援を実践。その中で専門職としての自信につながり、特に食への関心は命を守る一部を担っているとの自覚が生まれています。日常の介護実践で生まれた「なぜ?」を大事に、連絡・相談も活発になり、ヘルパーからカンファレンスを求める声が出るようになりました。
 また、職場づくりには所長の姿勢(断らない、あくなき向上心と介護の質の向上、職員、事業所教育)が大きな要素になっていると指摘しました。

(民医連新聞 第1641号 2017年4月3日)

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