いつでも元気

2004年6月1日

特集1 おかしいぞ?マスコミ2 自衛隊の「人道復興支援」の怪しさ 報道されないサマワでの「給水活動」のなかみは・・・

「イラクでの日本人人質事件を見ると、今後ますます情報統制が強まるのではないかと心配です」という久保田弘信さん。昨年三月、空爆下のバグダッドから生なましいレポートを送ってくれた(03年5月号)フォトジャーナリストです。

 久保田さんは戦闘終結後の昨年四~五月と、一二月、今年三月にもイラクにいっています。その目で見ると「自衛隊のイラク派遣に関しては、日本にはすでに報道の自由はない」といいます。

給水活動の実態は

 自衛隊が活動するサマワを取材して驚いたことの第一は、「人道復興支援ていうけど、いってみたらサマワは 立派な街。市場には何でもある。ぼくはアフガニスタンに何度もいっていますから、人道支援が必要だというならアフガニスタンの方がずっと必要です。人道支 援のためにイラクにいくというのはウソですね」。
 さらに自衛隊の主任務という給水活動。「水だって、蛇口をひねればちゃんときれいな水が出る。びっくりしました」
 その後、国会でのNGO関係者の陳述などで、自衛隊の給水活動の非効率はあきらかに(別掲)。しかし、そのことはほとんど報道されていません。
 自衛隊がサマワにもっていっている浄水・給水設備は四セット。そのうちの三セットは自衛隊員が日常生活用水に使っていて、サマワの人のために使われてい るのはたった一セットだけです。それも、地元自治体の給水車に宿営地内まできてもらい、鉄条網越しに給水しています。
「怖くて外に出られない。いつ攻撃されるかわからないんです」と久保田さん。

サマワでも攻撃予告が

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広大な宿営地内で行なっている浄水・給水作業(サマワで)

 「いま、占領軍に対するイラクの人の怒りが限界をこえ、全土が戦闘状態になってきています。しかしこれは、自衛隊本隊がいく前から兆候はありました」
 久保田さんはことし一月、バグダッドで子どもに石を投げつけられるという経験をしました。「ショックでした。空爆下でも戦闘終結直後でも、イラクの人は 日本人を歓迎してくれた。それが日本人と見て、子どもが石を投げてきたのです。自衛隊の宿営地付近が砲撃されましたがあそこは周りに何もないところ。自衛 隊を狙ったとしか考えられません」
 本隊派遣の前、サマワは安全だといわれていました。しかしじつは、サマワ駐在の日本の通信社に攻撃予告があり、通信社はサマワを撤退、バグダッドに引き 上げるという事件がおきていました。が、この「事件」も報道されませんでした。

基地は立派になっていく

 あれほど日本人大歓迎といっていたサマワですが、三月にいったとき久保田さんは、何人もの人に「自衛隊は結局なにもしてくれていないじゃないか」とつめよられたそうです。
 「人質事件はひとごととは思えません。小泉さんは人質犯の神経を逆なでするようなことばかりした。どうしたら助けられるだろうということは一瞬も考えず 『テロリストには屈しない』といい放つ。チェイニー米副大統領と握手して自衛隊派遣の継続を約束する。信じられません」
 「イラクから、解放にたちあったクベイシ師の言葉として直接伝わってきたのは『私たちは日本国民でなく憲法違反をおかしてまで自衛隊をイラクに派遣した 日本を責めているのだ』『ロシアや中国の大使館は自国の人質救出のために何度も連絡してきたが、日本大使館からは一回だけだった。解放後も、日本政府から 正式な謝意が伝わってこない。川口外相の声明は解放を望んでいないように聞こえた』などです。これでも政府は、『我々の水面下の努力が実って人質が解放さ れた』と自慢するのでしょうか」
 「自衛隊がイラクにいったから人質事件がおきた。NGOも活動しにくくなった。自衛隊の基地はどんどん立派になっていくけど、支援活動はイラク人の目に 見えない。これでは米軍の応援のためにきたと思われてもしかたない。マスコミもこの実態をきちんと報道すべきです」

自衛隊給水活動のこの非効率!

  費用 給水対象 1日あたりの給水能力
自衛隊 約377億円 1万6000人(1日1人5㍑で計算) 80トン
国際NGO 約1億円 10万人(1日10~20㍑で計算) 1000~2000トン
■石破防衛庁長官の説明によれば、サマワの人口16万人のうち、給水を必要としているのは9万人。陸自の給水能力は1日あたり最大80㌧。「1人1日5㍑として1万6千人分」といいます。ちなみに自衛隊員は1人1日100㍑の水を使っています。
 550人の陸上自衛隊員のうち、浄水・給水活動、学校の復旧作業、医療支援などの活動をしているのは120人。430人はその警護をしています。
 医療支援は、週1回程度、サマワ総合病院での症例検討会に出席するだけで、治療はしていません。
 一方、航空自衛隊は、武装した連合軍兵士や補給物資の輸送を行なっています。
■国際NGOはフランスの場合で、5人のフランス人が100人のイラク人を使って行なっているもの

いつでも元気 2004.6 No.152

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