いつでも元気

2017年5月2日

安心して住み続けられるまちづくり・鹿児島 歌声が響く南の島の“笑談所”

文・宮武真希(編集部)/写真・野田雅也

 ♪長生きしんしょれよ ヨーハレーイ
 奄美民謡の島唄「黒だんど節」が聞こえてきました。
 ここは奄美大島の空港から車で約3時間、
 大和村の名音集落にある「のんティダの会 笑談所」です。
 毎週土曜の午後に喫茶コーナーを開いています。

 「まぁ、いらっしゃい。どうぞ座って。いま、おいしいコーヒーを入れますからね」。
 午後2時、笑談所の喫茶コーナーが始まると、15席はあっという間に満席に。建物裏の駐車場では、奄美医療生協北大島区大和支部の江崎信子支部長たちが、健康チェックを開催中。血圧や血管年齢、骨密度の測定とこちらも盛況で、世話役の1人・重野弘乃さんが「終わったらコーヒーを飲みにいらしてくださいね。待ってまーす」と声をかけます。

「みんなに会うのが楽しみ」

 村の西部にある名音集落は人口205人、113世帯が暮らしています(3月現在)。住民の高齢化は進み、約60人が老人会に加入しています。
 笑談所ができたのは5年前。きっかけは県の「地域支え合い体制づくり事業」でした。行政の提唱する「支え合いマップ」づくりを通して住民が課題を出し合い、住民が主体となって各集落で支え合いグループが誕生。現在、村では10のグループが活動しています。グループに関わっていたのが、大和村保健福祉課の元職員だった重野さんと、同支部副支部長の国副ユキヨさん。「ゆらい所(楽しみ場)」を作ろうと倉庫を借りて改築し、電化製品や食器を持ち寄って、「笑談所」をオープンしたのです。
 「のんティダ」とは「のん=名音」と「ティダ=太陽(奄美の方言)」を合わせた言葉。奄美医療生協の班の活動として、重野さん、国副さんと納幸代さんが喫茶コーナーの世話役を担います。子どもに島唄を教える班会も開催しています。
 喫茶コーナーに毎回参加する中井ミクエさん(83)は、「ここは楽しいよ。他人の家だとみんな遠慮するけど、ここは気兼ねがない。みんなに会うのが毎週の楽しみ」と笑顔を見せます。なかには、自転車で25分かけて隣の集落から来る人も。「ひとり暮らしで毎週土曜日にここに来るのを楽しみにしている」と言います。

高台にある神社から見た名音集落

高台にある神社から見た名音集落

おもてなしの気持ち

 笑談所ではコーヒーや手作りのおやつを準備し、おもてなし。1人分をおぼんにのせて配膳する心配りは、世話役さんたちのアイデアです。
 「お好きなものを自由にとってください、とお皿に盛るのもいいけれど、1人ひとり旬のものを一品ずつお膳に添え『どうぞ召し上がってください』と差し上げた時の皆さんの笑顔が私たちも嬉しいんですよね」と重野さん。村で収穫したたんかんは、切り分けてお皿に盛り、そっと菜の花が添えられています。
 地域の「困った」を解決できるようにと、笑談所には散髪セットや農機具なども揃え、住民の要望に応えています。

ひきこもりの予防にも

 のんティダの会の活動は「楽しい」だけでなく、ひきこもりの予防にも役立っています。「週に一度は、ここに遊びにいらしてくださいね」と声をかけあい、常連さんの顔が見えないと、自宅にコーヒーやお菓子を届ける心遣いも。「これからも、和気あいあいと楽しく続けていけたら」と国副さん。南の島の暖かい気候に、気配りも心地よい居場所です。

いつでも元気 2017.5 No.307

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