MIN-IRENトピックス

2017年5月2日

特集「私と憲法」 現場と憲法、学びで結ぶ

文・井口誠二(編集部)/写真・野田雅也

KPPの活動を報告する大野さん

KPPの活動を報告する大野さん

 東京保健生協は2014年に、「憲法プライドプロジェクト」(KPP)を立ち上げました。
 若手職員を中心に「気軽に憲法を学ぼう」のスローガンのもと、憲法カフェなどの活動を続けています。3月1日の第5回憲法カフェを取材しました。

 平日の夜にもかかわらず、憲法カフェには職員や組合員ら14人が集まりました。5回目となる今回は「無料低額診療事業から見える憲法の大切さ」をテーマに、同法人の橋場診療所看護師長の松井美春さんが講演。会場になった同診療所は、3年前から無料低額診療事業(無低診)を行っています。

現場から見えるもの

 松井師長は講演の中で「契約社員のシングルマザーが『お金がないし、仕事を休めない』などの理由で病院に行けず、ショック状態で救急搬送されてきた。その後、無低診の適用になりました」など実際に関わった事例を紹介。
 「働いていても生活困窮に陥ってしまう人たちが多い。『本人の努力が足りない』という自己責任論ではなく、社会の仕組みそのものを良くしていかなければいけない」と松井師長。憲法25条で規定する“権利としての社会保障”を学ぶ必要があると訴えました。
 民医連の目指すものは、「人権を尊重する医療と介護・福祉」。その人権の下支えになっている憲法を見つめ直すことが、今求められています。
 組合員の佐藤ふみ子さんは「『なぜ私たちの税金が働かない人のために使われるんだ』と反感を持つ人が多い。病気や障害を自己責任論だと押しつけないで、もっと個人が守られる世の中にしたい」と語りました。

見えてきた成果

 KPPが発足したのは、集団的自衛権の行使を可能にする解釈改憲が話題になった頃。これまで、憲法学習会や署名活動では主に平和をテーマに活動してきましたが、今回は社会保障を取り上げました。KPP発起人の岡部敏彦医師(大泉生協病院)は「国の政策が戦争を進める方向に傾けば社会保障費が削られるように、僕らは平和と社会保障の問題は同じものと考えています。また、それらを守る運動は民医連ではごく日常だと思っています」と話します。
 KPPは昨年11~12月に全職員と組合員を対象にアンケートを実施。憲法学習会に参加した職員が47%に上るなど、全体的に関心が高くなっているとの結果が出ました。
 「夜の企画だと育児の都合などで参加できない職員も多いけれど、法人事務局ではママさんたちがランチ憲法カフェを続けている。このような取り組みを広げていきたいんです」と今回の憲法カフェを運営した大野聡美さん(大泉生協病院事務・26)。岡部医師は「従業員の半分が憲法を学習している企業なんて他にないでしょ。凄いことですよ」と笑います。
 職員だけでなく、組合員も支部主催の憲法カフェや学習会を開催するなど、法人と共同組織が一体となり憲法学習を行っています。

気軽に話したい

 高畑佳苗さん(東京健生病院事務・25)は「KPPに入った頃は『忙しいのに、なんでこんなことを』と思ったけれど、学びを通して診療現場と制度や憲法が結びついてきました。もっと多くの人にKPPを知ってもらいたいです」と話します。
 「『学習しよう』と堅苦しくしないで、お昼を食べながら楽しく憲法を語る、そんな企画にしないとね」と岡部医師。楽しく参加できる雰囲気作りが課題です。
 そんな取り組みの1つが“マイプライド”。憲法や平和への思いを書いた画用紙を掲げた写真を撮り、それを集めて動画にしました。さらに誰でも観られるようYouTubeにアップロード。1人ひとりの思いが伝わり、連帯感が生まれています。既に350人が参加していますが、「今年で500人を目指します」と大野さん。
 どこでも誰でも気軽に憲法トークができることを目指して、KPPの活動は続きます。

いつでも元気 2017.5 No.307

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