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2017年6月20日

これでばっちり ニュースな言葉 東京都議会議員選挙 何が注目点なのか

 知事の相次ぐ不祥事・辞職でしばしば全国ニュースになってきた東京。今年も、築地市場の移転先とされていた豊洲の土壌汚染や、石原慎太郎氏が都知事時代に説明していた盛り土などの安全策が行われていないことが発覚。民医連の目線で、今井晃県連事務局長が「東京都議会議員選挙」を解説します。

東京民医連 事務局長

こたえる人 今井 晃さん

 六月二三日告示、七月二日投票の東京都議会議員選挙は、舛添前都知事による豪華海外出張、都政や政治資金の私物化に始まり、オリンピック費用や豊洲新市場の問題などが繰り返し報道されたこともあり、かつてなく全国の注目を集めています。また、日本の首都の選挙結果は国政に大きな影響を与えますから、重大な政治戦となっています。

■国の行方にもかかわる

 東京民医連では、この選挙に三つの意義があると位置づけています。
 第一は、五月三日の安倍晋三首相の改憲発言との関係です。「二〇二〇年までに憲法九条を改定する」と表明し、急速に大きな争点に浮上しました。
 国民が「九条の改憲は不要」と考えていることは、各種世論調査からも明らか。選挙は、都民の圧倒的な意思を示す場になります。改憲勢力に審判を下す結果が出せれば、次の総選挙でも市民と野党の共同の発展を、全国で勢いづけることができると考えています。

■豊洲への移転はだめ

 第二は、日本でも世界でも最大規模を誇り、東京の食をささえてきた築地市場の豊洲移転問題です。
 豊洲市場の予定地は、元は東京ガス工場。高濃度に汚染された場所で、発がん性物質のベンゼンや猛毒のシアン、ヒ素や水銀が検出されています。とくに、曝露すると白血病を起こすことで知られるベンゼンは、〇八年に環境基準の四万三〇〇〇倍の量が検出され、今年春に専門家会議が行った調査でも、環境基準の一〇〇倍の濃度でした。汚染除去ができていないため、現在でも「土壌汚染対策法」の指定が解除されていません。専門家会議も「豊洲市場を無害化できない」「環境基準以下にはできない」と認め、小池都知事も六月議会で陳謝した―というのが現状です。
 生鮮食品の市場にはどう考えても不適切です。豊洲への移転を中止し、八〇年間、有害物質の汚染も食中毒も起こしていない築地市場での再整備へ計画を切り替えさせるべきだと私たちも考えています。

■医療と福祉の大後退

 第三に、医療と福祉の問題です。都民が重視する施策の第一位はどの世論調査でも「医療と福祉」です。 一九九九年に石原元知事は「何がゼイタクかといえば、まず福祉」と、福祉の削減をすすめました。石原氏に続き、猪瀬、舛添の三知事はいずれも「世界で一番企業が活躍できる東京」を最大の政策目標にしました。つまり、「巨大開発推進と福祉切り下げ」という都政が一八年間も続いたのです。
 その結果はこんな形で表れています。一九九八年度都予算で福祉などに支出される「民生費」の割合は四七都道府県中第三位、老人福祉費は同二位でしたが、一五年度はそれぞれ三二位、四二位にまで転落。逆に、土木費は四二位から二一位へと急上昇。「逆立ち都政」そのものです。

■医療の課題

 まず、救急搬送が増加(とりわけ七五歳以上で上昇)する中、救急隊の出動から病院収容までに要する時間が四七・三分と全国平均に比べて八分近く遅いのです。救急医療体制の整備が急務です。
 二番目に、国民健康保険料が高すぎる問題です。国保滞納者の割合は、全国平均で一六・七%ですが、東京は二一・九%、しかも前年より悪化しています。滞納のペナルティーとして資格証明書・短期保険証の発行も多く、必要な医療が受けられない「受診抑制」が猛烈にかかっています。
 三番目に地域医療構想で、東京都の二〇二五年の必要病床数は「現行より回復期等の増床が必要」との試算が出ました。しかし病床整備は「地域医療計画の基準病床数によって行う」とされ、増床どころか逆に約一万床のベッド削減が企てられています。さらに特別養護老人ホームや訪問看護ステーションが大幅に不足しています。東京の高齢者数は二〇三〇年に向けて一・五倍に増えますが、対策はまったく不十分です。

*  *  *

 東京民医連は「大規模開発優先から、くらしと福祉を優先する都政に変えたい」と、職場や共同組織のみなさんと学び、話し合っています。
 具体的な要望に次の四点をあげています。(1)国民健康保険料、後期高齢者医療保険料の引き下げを、(2)子ども医療費無料化を。子ども国保料の軽減を、(3)無料低額診療事業の拡充を。都民に寄り添った福祉行政を、(4)医療・福祉の職場が職員を十分確保できるように、また長く働き続けられるように処遇改善を。

*  *  *

 選挙への関心は高く、投票率は前回より一〇%以上伸びるとの予想も出ています。そんな中、もと民医連職員(作業療法士、医学対、看護師の三人)が「都政を変えたい」と立候補を決意し奮闘中。東京民医連も、憲法改悪阻止、都政転換のために全力でがんばります。

各党の様相:自民・公明はこんな状況でも豊洲移転を推進、反対は共産党だけという構図です(6月13日現在)。小池百合子都知事の地域政党・都民ファーストは「知事に従う」と態度保留。小池氏は公明党と協力し、ポスターや同党の応援演説も行っています。

資料)転落した東京の福祉
1998⇔2015年度比較
47都道府県中
 民生費・・・・・・・・・・・・3位⇒32位
 老人福祉費・・・・・・・・2位⇒42位
 急上昇中は
 土木費・・・・・・・・・・・42位⇒21位

(民医連新聞 第1645号 2017年6月19日)

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