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2017年7月4日

「やりがい感じる」 困った人に目を向け “無低診”テレビ放映の静岡・浜松佐藤町診療所

 全日本民医連が発信する貧困と疾病の実態が注目されています。5月にはNHKの情報番組「あさイチ」で、無料低額診療事業をテーマに民医連事業所が取材されました。番組に登場した静岡・浜松佐藤町診療所をもっと知りたい。診療所に入る相談から見える地域の実態と、携わる人たちの思いを聞きました。(丸山いぶき記者)

印象的なあの言葉、実は

 五月二五日放送の「あさイチ」では、経済的理由で受診を控え、気管支喘息を悪化させたマキさん(仮名・四〇代)の事例から、無料低額診療事業がとりあげられました。マキさんは、体調不良で働けず、また生活に困るという悪循環に、死も考えましたが、静岡健生会・浜松佐藤町診療所で治療を受け「ほっとした」と語ります。放送では「よくぞここにたどりついてくれた」と語った相談員の村松幸久さん(静岡西部健康友の会長)の言葉が印象的でした。
 「あの言葉には背景が」と村松さん。マキさんは、家庭の事情で高校を中退し、アルバイトを転々とし、月一〇万円ほどの収入で暮らしてきました。喘息が悪化し一年以上微熱が続きましたが、無保険だったため市販薬を飲んでいました。受診した月はほとんど働けず、呼吸苦、高熱、動悸も出て、やむを得ず行った休日当番医が佐藤町診療所でした。無低診を知らず偶然来たのです。「よくぞここに…」の言葉は診療所のみんなの思いでした。

無低の先、生活再建が大事

 診療所では二〇一〇年から無低診を行っていますが、利用者は実はあまり多くありません。第一号が一昨年のマキさん。その後も、年一件あるかないか。受けた相談を他の制度につなげるからです。
 対応は元市議会議員で経験豊かな村松さんが頼りですが、生活保護申請などの場面には職員が同行します。職員を育てたいと大城智昭事務長が意識しています。マキさんの時も無低診を適用後、受付事務の本多玲さんが村松さんと市役所に同行し、生活保護につなぎました。
 「無低診は、一時的な救済手段。その先の生活再建が何より重要」と村松さん。浜松市中区内の無低医療機関は佐藤町診のみで、入院には対応できません。院外薬局での負担も重い。行政に粘り強く働きかけ、無保険者には短期保険証の交付を、また生活保護など公的制度や社会資源につなぐ。「それがなければ解決にならない」と村松さんは強調します。

職員のアンテナ

 診療所では、週一回の多職種カンファレンスで気になる患者さん情報を共有しています。二〇〇八年のリーマンショック時には浜松にも失業者があふれ、路上生活者も増えました。「こうした人たちの生活相談会などに参加した経験が、患者さんの生活に目が向くきっかけでした」と大城事務長。「佐藤町なら困っている人を断らない」と市役所に頼られていることも職員の自信になっています。
 「受付では、無保険や生活保護の人がひと目で分かるようにし、杓子定規に保険証提示を求めないなど配慮しています」と小黒耕平事務次長。マキさんが苦しい事情を話せたのも「日頃から相談しやすい受付を心がけてきたから」と大城事務長。本多さんが最近気になるのは、カード払いで口座引き落としが遅れている患者さんです。課題は無低診をもっと知らせる工夫です。

その後のマキさん

 マキさんは、今も診療所に通っています。テレビ放送は「泣きながら見た」と。
 うつ傾向が強く当初は待合室でうつむいていたマキさんですが、最近は明るい顔も見せます。友の会から「おしゃべりは苦手でも、手を動かせば良いから」と布草履作りの会に誘われ「やってみたい」と笑顔に。
 それを聞いた本多さんと小黒次長の表情がパッと明るくなりました。「本当に良かった。元気に通う患者さんを見るとうれしい」、「診療所で働いていて良かった、とやりがいを感じる瞬間だね」。

「いつでも なんでも」友の会

 友の会では、二〇〇四年から毎月第三木曜日の午前中、「なんでも相談会」を行っています。

なんでも相談会

 確定申告時期には「行列のできる相談会」になります。相談会も、集中的に実施。税金の仕組みも伝えて「庶民いじめ・金持ち優遇をやめさせよう」と話します。
 職員の情報で、脳梗塞後のリハビリをためらう高齢夫婦の相談に乗ったこともあります。収入が国民年金と被爆者の妻の健康管理手当、妻がダブルワークしても生活が苦しく、生活保護を申請。世帯収入がわずかに保護基準を超えることを理由に申請を受理しない窓口に「国が始めた戦争で生涯重荷を負わせ、七〇歳過ぎても昼夜働かせていいのでしょうか」と訴え、受給につながりました。

地域に根付く友の会

 診療所のある佐藤町地域の約七割が友の会員です。友の会の夏まつりは、地域の年中行事に。水曜日には友の会室の前に地域の人が作った有機野菜が並びます。
 なんでも相談会も地域に浸透。待合室に隣接する友の会室は、相談日以外も村松さんが常駐し「いつでも、なんでも」と開放しています。気になった人を紹介する世話人さんもあり、「つなぐ意識がありがたい。一人でも二人でも、参加してくれれば」と村松さんは話します。

(民医連新聞 第1647号 2017年7月3日)

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