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2017年7月4日

フォーカス 私たちの実践 家族も加わる療養援助 鳥取・鹿野温泉病院 家族と療養にとりくむ「共有ノート」で意思疎通を円滑に

 鳥取・鹿野温泉病院の医療療養病棟(一四一床)では、職員と家族をつなぐ「共有療養ノート」を活用しています。患者の日々の状態や援助計画を伝えるのはもちろんのこと、病状の改善を喜び合ったり、家族の不安や悩み、要求を共有するツールとしても役割を発揮しています。職員だけではなく、患者の家族とも手を結んで、「その人らしく生きる」援助を実現しよう、というねらい。西病棟の奥田久美子師長の報告です。

 当院は以前からチームでとりくむことを重視し、情報共有に努めてきました。家族にも、患者さんの状態やケアの内容を知ってもらいたい、家族とのコミュニケーションを深めたいと考え、二〇〇〇年に「共有療養ノート」を導入しました。しかし、当初のノートは、体温、脈拍、血圧、食事の摂取量、排泄回数など医療者側から一方的になりがちな情報提供で、家族は記入しにくい仕様でした。

患者・家族もチーム

 〇九年、患者・家族の希望を書き込んだり、病院の援助計画をわかりやすく伝えられるよう、ノートの書式を変更しました()。入院当日、担当看護師が共有療養ノートの説明をし、それを使うことについての家族の同意を確認すれば、患者のベッドサイドに設置します。担当の看護師や介護職は、入院時の状態を一週間以内に記入します。
 意識したのは、看護・介護実践が見えるようになることです。看護職・介護職のそれぞれの援助内容や、患者本人や家族の協力が必要なことを書く欄を設けました。
 また、家族からも医療・介護職に伝えたいことを書き込めるように工夫しました。ひとりひとり異なる願いや人生を知り、患者・家族もチームの一員として、ともに協力しあって療養をすすめていきたいと考えました。

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ノートから伝わる思い

 家族からの書き込みは、職員にも励みになります。ノートにびっしり書く人もいますが、それは患者への思い、不安や悩みの表れと捉え、対応するようにしています。家族の率直な思いを知ることで、「相手の立場」に立ち、思いに寄り添い、多様な角度からケアを考えられるようになりました。
 共有ノートの内容は担当スタッフだけでなく、職員間で共有します。共有ノート導入後は、苦情や不満をキャッチでき、早期に解決できるようになってきました。
 職員は週二回以上記入することが目標。毎月振り返りもします。職員の記入達成率は八〇~一〇〇%を維持。家族に分かりやすく伝えるように書くことで、自分自身の看護や介護を客観視したり、振り返ることができます。

伝え方、どうするか

 課題もあります。二〇一〇年に行った患者家族アンケートでは、九〇%超がノートの目的や内容を理解していたものの、半数がスタッフの記入内容が「分かりにくい」と回答しました。専門用語を多用せず、相手に伝わるように書くことも意識して、患者、家族を主体とした援助に活用し続けられるよう今後もすすめていきます。


 共有療養ノートを通じた家族とのやりとりです。
事例1)終末期の男性患者
家族「先生とお話ししました。良い日悪い日の繰り返しだと思いますが、一日でも良い日、楽な日がありますように」
看護師「今日から注入食を少量ずつ開始しました。熱が出ないように願っています。暑い日が続くのでご家族も身体に気をつけて」
家族「ありがとうございます。一日の疲れがなかなかとれません。でも、長男、孫たちに囲まれてがんばっています。注入食がうまくいきますように」
家族「窓辺にかえてもらい、気持ちよさそうです。目をパチパチしていました」
事例2)五〇代の男性患者
家族「初めてのお散歩! とても嬉しい時間でした。主人が車いすに乗っている姿を見て、ここまでよくがんばったね、と主人に心から感謝しました。スタッフの皆様にも心から感謝です」

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(民医連新聞 第1647号 2017年7月3日)

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