いつでも元気

2017年7月31日

認知症Q&A 大牟田市の先駆的な取り組み(2)

 福岡県大牟田市の認知症に関する取り組みについて、前回に引き続き介護老人保健施設「くろさき苑」(医療法人親仁会)苑長の宮田真由美さんに解説してもらいました。

 大牟田市は認知症支援をきっかけに、人にやさしいまちづくりを進めています。認知症があってもなくても、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせるように、官民一体で「認知症ケアコミュニティ推進事業」を住民、介護事業所、小中高校、大学まで広げています。認知症の人にやさしいまちは、子どもからお年寄り、障害がある方もない方も誰にとっても暮らしやすいまちだと思います。

市がまちづくり宣言

 大牟田市は2005年、市全体で認知症の人とその家族を支えていくことを「認知症の人とともに暮らすまちづくり宣言」として、全国に発信しました。
 宣言から10年を迎えた2015年には、新たな宣言を発表。そこには「大牟田市は、子どもから大人まで、あらゆる世代の市民が心を一つにして、認知症の人やその家族の願いに寄り添い、地域社会において、誰もが人として尊重され、安心して暮らせるまちづくりを推進してまいります」と書いてあります。
 市の認知症に関わる事業のうち、認知症コーディネーターの養成、もの忘れ相談検診、認知症予防教室「ほのぼの会」、認知症SOSネットワーク模擬訓練、独自に作成した認知症啓発絵本を使った小中学校への出前教室は長く継続しています。

コーディネーターの養成

 市では03年から「認知症コーディネーター養成研修」を始めました。目的は認知症ケアの質や実践力の向上、地域づくりをけん引する人材の育成です。2年間(約400時間)の研修で、認知症の知識やケア技術の習得にとどまらず、「パーソン・センタード・ケア」など価値観の共有に力点を置いています。
 この養成研修の受講は06年から、市内でグループホームや小規模多機能型介護施設を開設する事業者の要件の一つにもなりました。また、地域包括支援センターには認知症コーディネーターが必ず配置されています。
 病院など医療現場からの受講生も増加し、認知症患者への対応力向上につながっています。市内には現在127人の研修修了生がいます。当法人でも介護現場のほか病院の看護師も受講しており、研修修了生は20人、受講中が3人です。

親仁会の取り組み

 最後に当法人「医療法人親仁会」(大牟田市)の取り組みを紹介します。
 認知症SOSネットワーク模擬訓練の実行委員会には地域の諸団体が参加。事務局は小規模多機能型居宅介護事業所の職員が担い、当法人からも研修修了生とコーディネーターが事務局を担当しています。
 修了生が地域、事業所で力を発揮するために、法人内で「認知症予防推進委員会」を立ち上げました。当初は自主的な組織でしたが、現在は法人の高齢者福祉委員会の小委員会として活動しています。
 推進委員会は地域の事業所とともに定期的な学習会や事例検討会を開催しています。また、法人組織課も委員になり、友の会の班会でもの忘れ相談検診を開催、認知症が懸念される方を市の二次検診につないでいます。
 さらに市の認知症ライフサポート研究会の中心メンバーとして、地域コミュニティ推進事業に参加。認知症啓発絵本教室のスタッフ、地域の認知症サポーター養成講座の講師を担うこともあります。
 今年のSOSネットワーク模擬訓練は9月24日です。見学に来てみませんか。問い合わせは大牟田市長寿社会推進課(☎0944・41・2672)へ。

いつでも元気 2017.8 No.310

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