医療・看護

2017年8月22日

相談室日誌 連載431 SWはどう寄り添い、立ち向かうのか(長野)

 昨冬、Aさん(四〇代男性)から「体調が悪い。受診したいがお金がない」と電話が入りました。二〇年ほど前から土木の自営業者です。体調不良で働けない日が増え、また仕事も減って所得は年一〇〇万円以下です。
 両親の離婚で四歳から児童養護施設で育ち、中学卒業後は仕事と住まいを求め三〇カ所ほど県内を転々。結婚したが離婚、二人の子どもは児童養護施設で暮らしています。別れた妻は精神疾患を抱え生活保護を受給。実母も生活保護受給者でしたが、五年前に孤独死のような形で他界。「母のような末路は避けたい」と別々の養護施設で育った姉と昨年、同居を始めましたが「四歳で離れ、姉弟の関わり方が分からない」とAさん。家で顔を合わすこともないようです。
 翌日、来院したAさんと無低診の利用を検討する中、国保四四条(失業等の特別な事情で、医療費の一部負担金が減免、免除される国民健康保険法の制度。ルールは自治体によって違う)が使えるのでは? と考えました。Aさんは消極的でしたが、一緒に申請に行くと伝え、役所に出向きました。その際、窓口から生活保護申請もすすめられましたが、Aさんは「生活保護ではなく体を治して働いて収入を得たい」と話しました。四四条はその後認められ、当院受診時からの医療費負担が免除になりました。
 このケースではAさんのこれまでの生活や思いを行政担当者とともに受け止めることができました。四四条申請の対応もスムーズで、生活保護申請の提案もありました。行政とともに対応を考えることの大切さを実感しました。
 いまSW業務はベッド回転を求められ、問題の早期解決、処理、目に見える成果を上げる事が重視されてしまっているように感じます。SWとして様々な生活困難を抱えながらも、それを乗り越え生き方を見いだそうとする人々の感情に触れること、背景にある事情をていねいに受け止め、いかに寄り添い、ささえ、立ち上がる力をともにどう見いだすのか、SWの専門性を改めて問われたように思います。

(民医連新聞 第1650号 2017年8月21日)

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