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2017年8月31日

安心して住み続けられるまちづくり・東京 ラーメン屋で友の会食堂開店

文・井口誠二(編集部)  写真・野田雅也

 代々木健康友の会は、毎月第1・3火曜日に「元気食堂」を開いています。
 会場はなんと地域のラーメン屋。
 開催するたび、ほぼ満席という人気の食堂にお邪魔しました。

 東京都渋谷区。イマドキのビルと昭和感あふれる建物が混在する街の一角に、地元のラーメン屋「時田屋」があります。
 午前9時半、店の前に続々と友の会員が集まってきました。時田屋が定休日の火曜日が、「元気食堂」の開店日。そのまま店の中に入るかと思いきや裏手のアパートへ。しばらく後、鍋や皿、炊飯器、調理台をわっせわっせと運んできました。「これが一番大変だね」と笑い合います。
 「場所を使わせてもらうんですから、食材や調理器具は全部自前で用意します」と友の会事務局長の清見温子さん。集まったエプロン姿の5人でテキパキと準備を始めます。
 包丁を握る1人は「男の料理教室が最初の一歩」という石井正統さん。「料理教室は授業。こっちはガンガン指示が飛ぶ実践編ですね」と楽しそう。食材の中には、石井さんが農園で育てたキュウリも。元気食堂には友の会役員から度々、食材のカンパもあります。「みんなで支える食堂なんですよ」。

料理が会話を呼び

 料理の準備が整った午前11時20分頃、「あら、一番乗り」と最初の来店者が。席に案内している間にも、次々とお客さんが来店。全18席の店内はあっという間に埋まりました。席に着いた人には、「手の運動」と折り紙を折ってもらいます。
 おしゃべりが盛り上がる中、友の会会長の布施仁さんが「さぁ、そろそろ始めましょうか」と声を掛けます。近況報告やメニューの紹介をしたら、みんな揃って「いただきます」。
 この日のメニューは、新ジャガのそぼろ煮と冷や奴、オクラのたたきにご飯、みそ汁。冷や奴には色鮮やかなトマトや大葉が添えられ、見た目も華やか。あちこちで「本当においしいねえ」「バランスも良くて助かるわ」と声が上がります。
 久しぶりに来たという斧渕孝子さんは「家族と住んでいるけれど、日中は1人が多いでしょ。ここだと友達と色んな話ができていいわね」と話します。
 斧渕さんを誘った柴崎俊子さんは、毎回訪れる常連さん。「1人暮らしでちゃんとした物を食べないから、ここの料理は野菜もとれて嬉しい。お話もできるし、ついつい食べ過ぎちゃうわ」。

居場所を無くさない

 元気食堂を始めたのは、時田屋から徒歩1分の場所にあった外苑診療所の閉鎖がきっかけ。同診療所は坂道が多い地域で交通弱者の高齢者には欠かせない診療所であり、体操やサークル活動など友の会活動の場でした。
 そこで代々木健康友の会は、最寄りの代々木病院までの送迎を始め、地域の友の会員が集まれる居場所も探しました。候補に挙がった時田屋の店主・時田和雄さんに話したところ、「定休日なら」と場所を提供。こうして昨年2月、元気食堂が開店したのです。
 「本当は体操もしたいけど、そういう場所ではないしね。それでもこの場で、健康講座の案内をしたり、ケアマネジャーさんが介護保険の説明に来てくれたり、普通の食堂ではできないこともできているよ」と布施会長。
 友の会の送迎や居場所づくりは、地域の見守り活動でもあり、医療や介護につなげる役割も果たしています。食堂での会話から、介護利用につながったこともありました。
 清見事務局長は「これからはもっと職員と連携した活動や、NPO法人化することも目指して頑張っていきます」と次なる目標を語りました。

いつでも元気 2017.9 No.311

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