憲法・平和

2017年10月3日

こたつぬこ先生の社会見学~3・11後の民主主義 (7)「器」は大きくなっているか

 このコラムを書いているのは9月20日。本紙が発行される頃は、衆議院は解散され、世間は総選挙にむけ走り出していることでしょう。9月17日に「ミサイルよりも国会が怖い」安倍総理が衆議院の解散総選挙実施に言及し、「人づくり解散」という意味不明なネーミングを打ち出したとたん、「わが逃亡解散」「逃げ恥解散」「沈黙の解散」「Jアラート解散」「自己都合解散」といった言葉がネット上を飛び交い、ワイドショーやニュースでも「なんで解散するんだ」という疑問の声が盛んに沸き上がりました。
 一方、東京都議選での「都民ファースト」の圧勝を追い風に、新党結成の動きも加速しました。しかし結党前からの主導権争いでさっそく迷走。本紙が発行される頃には、潮目を読むのがうまい小池都知事は、自ら乗り出しているでしょうか。
 7月の都議選での歴史的大敗のダメージが癒えない自民党、盛り上がらない新党という状況下で行われることになる今回の総選挙は結果の予測がとても難しい。予測が難しいということは主体的な活動によって結果は大きく変わりうるということです。そして政党の枠組みではなく、それぞれの地域でこれまで培ってきた多様な取り組みが結果に大きな影響を与えることになります。
 安倍総理の戦略は「改憲」「消費税」で前原民進党との違いをかき消し、野党を分断し、無党派層を選挙から遠ざけて低投票率で勝ち抜くというもの。世論が解散に懐疑的なら「受け皿を割ればいい」というわけです。これに対抗する道はひとつしかない。前原民進党が、安倍改憲とまやかしの社会保障充実をちらつかす消費税増税に反対すればいいのです。
 おそらく最低限の野党間の選挙協力はできるでしょう。しかし安倍政権を追い込むための「本気の共闘」をつくりあげるためには、民意をきちんと受け止めるための「器」を大きくすることが必要です。
 そして安倍総理の選挙戦略に対抗する「民意の器」は、市民によって支えられ、より大きなものになる可能性が開かれています。わたしたちにいま必要なのは、各野党の違いを際立だせることではなく、安倍政権に疑問と不安を抱くひとびとを受け止めることができる共通の「民主主義の器」です。加計・森友疑惑から安保法制、原発、消費税増税、残業代ゼロ。そして改憲、こうした個々の重大な課題をまとめあげる器こそが、安倍政権を追い詰めることになります。衆議院選挙告示を前に、この器はどのくらい大きなものになっているでしょうか。

こたつぬこ:本名は木下ちがや。政治学者。著書に『国家と治安ーアメリカ治安法制と自由の歴史』、翻訳:デヴィッド・グレーバー『デモクラシー・プロジェクト』など Twitterアカウント@sangituyama

(民医連新聞 第1653号 2017年10月2日)

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