医療・看護

2017年10月3日

相談室日誌 連載433 無低診きっかけに 社会保障につながって(兵庫)

 Aさんは要介護状態の母親と二人暮らしの五〇代男性です。四〇代半ばで介護と腰痛をきっかけに会社を休職、復帰叶わず退職となり、それ以降、無保険状態で全く受診できていませんでした。下痢が数週間続き、トイレが三〇分おきになり、無料低額診療事業(無低診)をしている当院を見つけ電話してきました。
 世帯収入は母親の年金一〇万円のみ。資産もなく貯金は残り二万円でした。国保に加入して無低診を使うにも、保険料の支払いが困難です。生活保護をすすめ、申請、受診できました。
 Bさんは六〇代女性。大腸がんが見つかりましたが、入院費が払えず治療せずにいたところ、知人に無低診の話を聞いて来院しました。三年前に別の市から転居したが、住所変更がすんでいませんでした。月八万円程のパート収入で、家賃と保険料、光熱費を払うと、とても医療費にあてられないと話しました。聞けば、身体障害者手帳三級を持っているといいます。彼女の住民票があるX市では、障害者医療費助成制度の適用対象は「身障二級以上」ですが、転居先のY市では、三級以上で利用可能です。住所変更し、助成を申請した結果、ひと月の入院費上限額が三万五四〇〇円から二四〇〇円に下がり、入院治療をすすめることになりました。
 AさんもBさんも、無低診の相談でつながりましたが、他の制度を利用して受診できるようになったケースです。二人とも「自分にこの制度が使えるなんて思わなかった」と語りました。
 制度の情報に触れられず、制度があっても利用できず、疾患を抱えたまま沈黙している人の多さを、相談業務を通じて感じる機会は少なくありません。そんな人が、無低診の相談をきっかけに社会保障制度につながることは、無低利用による受診援助と同様、民医連事業所が無低診を行う意義ではないかと感じています。
 日々変化する制度にアンテナを張り、「無低診」からつながる人の受診のチャンスを逃さず、社会保障制度への架け橋となれるよう、SWの役割を果たしていきたいと考えています。

(民医連新聞 第1653号 2017年10月2日)

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