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2017年10月3日

共同組織×職員で地域包括ケア推進委員会 「知ってるつもり」の地域、見えてきた 東京・健友会

 共同組織強化拡大月間が一〇月からスタートしました。安心して住みつづけられるまちづくりを目指す住民組織として、友の会・医療生協組合員は、私たちの力強いパートナーです。東京・健友会ではそんな健康友の会とともに、地域包括ケア推進委員会を立ち上げ、学習や地域分析などの活動をつづけてきました。「地域包括ケアって何?」と、当初はイメージが湧かなかった友の会役員たちも「これまでの活動を積極的に続ければ良い」と納得し、職員とともに無差別・平等の地域包括ケアをめざしています。(土屋結記者)

 地域包括ケア推進委員会を立ち上げたきっかけは、法人の第四次長期計画(二〇一五年四月~二〇年三月)の主要課題に「地域包括ケア」を位置づけたことでした。この長期計画は友の会の役員会でも議論され、「友の会の出番。地域は知っていても分析まではしていなかった」と気づきました。

■活動2年、地域分析28回

 委員会のメンバー一二人のうち半数は友の会役員です。職員側は、名誉理事長、看護理事、事務理事、組織部長、医事課、医学対など―が参加。二〇一五年五月から活動を始め、学習は毎回、地域分析は約三〇項目で行いました(資料)。また、近隣の健康友の会の活動や民医連外の事業所の見学も行っています。
 一同が学んだのは、日本の高齢化の課題は後期高齢者や認知症患者、独居や老老世帯が増え、それに伴い介護需要や孤立死が増えること。そして、東京都市部ではそれらの課題がより顕著に表れることです。
 さらに、自治体ごとに地域包括ケアのための制度や実践が違い、地域単位で行政に要望や実態を伝えるなどの働きかけが必要だと分かりました。
 また、学習や見学で様々な活動を学んだことで、自分の地域に何が必要か、また友の会として何ができるか考える手がかりにするには、地域分析が大切だと気づきました。

■友の会の活動で良いんだ

 地域分析のメニューは表の通り。公的機関などが出している各種の統計を、ただ表面的に見るだけでは見えなかった地域の姿が分かってきました。
 たとえば中野区の高齢化率は二三区内で平均並み、世帯数に対する高齢者単身世帯の割合は都内で二番目の低さです。ところが、詳細に分析してみると、全国に比べて二〇~三〇代の若者が多く、未成年者が少なめ。若年単身者が多いために、高齢化率や単身高齢者の割合などのデータが、地域で暮らす人たちが「高齢者が多い」と実感しているより、低く出ていたと分かりました。
 その他に、高齢者ほど長く住みつづけていて独居や老老世帯が多いこと、生活保護世帯が増えているが、中でも独居高齢者が増えていると分かりました。また住宅環境は貧しく「木造賃貸」が多い、しかも特養や老人ホームなどの居住系施設が少ないと分かり、地域が抱える大きな課題は「住まい」だと判明しました。
 一回目から参加している桃井健康友の会の茂木皓三会長は、「数値や図で、目に見える形ではっきりと自分たちの地域がつかめたことが大切」と振り返りました。

活動まとめて、冊子に「地元に合った地域包括ケア示そう」と

 委員会が始まる前の地域包括ケアへの受け止めは「政府がすすめることに良い印象がない」「とにかくよく分からない」というものだった友の会メンバー。委員会を通じて地域で住みつづけるための拠点として居場所づくりが重要だと学びました。これは、民医連や共同組織がこれまでもとりくんできたこと。
 「少しずつ活動を外に広げていけば良い。これからも友の会活動をつづけていけば良いと分かった」と桜山健康友の会の木村ケイ副会長。
 九月一二日、取材した三三回目の委員会では、中野・杉並健康友の会のとりくみの報告につづいて、これまでの委員会活動をまとめて冊子にすることについても提案され、話し合いました。
 「これまで私たちがとりくんだ地域分析の結果や実践を踏まえて、中野・杉並に合った地域包括ケアを示す冊子にしましょう」と法人の山田智名誉理事長(医師、全日本民医連副会長)が呼びかけ。
 「私でも書けるかしら?」と、不安気味に顔を見合わせていた友の会のメンバーも、「これまでの皆さんの活動について書けば良いんですよ」という口添えに、「それなら」と意思統一。冊子は今年度末の完成を目標に作業をすすめます。


学習テーマにとりあげたこと
・高齢化が世界で最も急速にすすむ日本の課題と問題点
・地域で住み続けられるための重要な必要な機能「地域包括ケア病床」
・地域包括ケアシステム3つの類型
・経産省の「経済財政再生計画」で社会保障関連の検討項目
・イギリスの認知症カフェ
・「介護事業日常支援総合事業」について


どのような地域分析を行ったか
・自治体比較、日常生活圏域ごとの施設分布
・人口密度、住環境、年齢構成、人口動態
・訪問診療終了理由調査
・友の会会員「健康度合いアンケート」
・「在宅患者ご家族要望調査」
・自治体ごとの地域包括ケア検討状況比較

(民医連新聞 第1653号 2017年10月2日)

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