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2017年11月7日

こたつぬこ先生の社会見学~3・11後の民主主義 (8) 新しい「器」が誕生した

 前回の執筆は9月20日。それから1カ月余りを経た現在から振り返ると、政治情勢の変化のあまりの激しさにめまいを覚えます。
 前原民進党は野党共闘から一転し、小池百合子氏率いる希望の党への丸ごとの合流に舵を切りました。小池人気の衣をかぶった希望の党の支持率は急上昇し、政権交代の可能性すら言われはじめました。ところが民進党系リベラルの「排除」を小池百合子氏が宣言し、民進党は大混乱に陥り分裂。「排除」されたリベラル系は枝野幸男氏を代表に立憲民主党を結成。日本共産党はただちに立憲民主党と共闘体制に入り候補者を一本化しました。そしてバーニー・サンダースをまねた手法で草の根からの政治を訴えた立憲民主党の支持は急上昇し、逆に支持率を急落させた希望の党と逆転、総選挙では大躍進し、野党第一党の座を獲得するに至ったのです。しかしながらこの民進党の分裂劇のあおりで、野党共闘は部分的にしか成立せず、結果、自民党、公明党が、改憲発議可能な3分の2の議席を獲得することになってしまいました。
 前号のコラムでも述べたように、都議選で自民党を歴史的大敗に追い込んだ「反安倍」の世論が消えたわけではありません。総選挙のさなか、内閣支持率は10%近く低下していました。つまり「内閣支持率が急落しているのに大勝する」という、実に奇妙な結果になったのです。これはひとえに、野党が「反安倍」陣営の姿をきちんと提示できなかったことに原因があります。今回の総選挙は、台風の影響もあり過去2番目の低投票率でした。そんななか、無所属の野党共闘候補たちがたたかい、小選挙区で4勝2敗した新潟県では、投票率が前回より10%上昇しました。有権者の多くは、安倍政権に対抗する野党共闘を求めていたのです。
 今回の総選挙は、議席数だけ表面的にみると、たんなる与党の圧勝にみえます。しかし細かい数字をみていくと、決してそうではないことがみえてきます。これについては来月号で書きます。今回は野党について。
 今回、野党は議席の上では健闘できませんでした。しかし、これまで党内紛争に明け暮れていた民進党が解体し、ストレートに民意を掲げる立憲民主党が誕生し、野党共闘が「完成」したことが、これからのたたかいの道を切り開きました。また共産党は議席を後退させましたが、これまでにない新たなつながりと影響力を獲得しました。10月24日現在、立憲と共産をあわせた政党支持率は、2014年総選挙直後の民主、共産をあわせた支持率から実に倍増しています。安倍政治に対抗する本格的な「政治ブロック」が登場したことが、今回の選挙の大きな成果なのです。

こたつぬこ:本名は木下ちがや。政治学者。大月書店から『ポピュリズムと「民意」の政治学:3・11以後の民主主義』絶賛発売中!Twitterアカウント@sangituyama

(民医連新聞 第1655号 2017年11月6日)

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