いつでも元気

2005年1月1日

元気スペシャル イラクの子どもたちにことしこそ平和を

写真家 森住 卓

 イラクの状況が日ごとに悪くなっている。一月に予定されている国民選挙を前に、米軍は武装勢力を一掃するといってファルージャを包囲し、総攻撃を始めた。
 しかし、町には子ども、婦人、老人が生活している。爆弾は市民の頭上に降り注いでいる。
 〇四年七月ファルージャで取材中、私を拘束した地元の武装グループは郷土防衛隊のような組織だった。イスラム教スンニ派の、敬虔で紳士的な人々で、当 時、ファルージャは、彼らが町の治安を維持していた。占領軍のいいなりになるバグダッドの暫定政権の統治を拒否し、住民による自治を始めていたのだ。
 いま、彼らはどうしているのだろうか。

米軍のいうテロリストとは?

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朝食のヨーグルトを買いにきた女の子たち(サマワ、04年3月18日)

 米軍が攻撃の口実にしている「テロリスト」とは誰を指すのか? ブッシュ流にいえば、占領政策に抵抗する者はみな「テロリスト」になってしまう。
 イラク市民の多くは、〇三年四月、ブッシュがサダム独裁政権を倒してくれたことには感謝していた。以来、米軍の占領がイラクに何をもたらすのか、じっと見つめてきたのだ。
 しかし占領から二年近くになるのに、治安は悪化する一方だ。停電や断水、失業など生活基盤の修復はほど遠い。生活をたて直そうにも、占領軍は、宗教心や 教育水準の高いイラクの人々の自治を敵視し、批判を武力で弾圧する。家族や友人が、子どもたちが、何の罪もなく殺され、家を破壊される。
 こんな不正義が許されるのか。
 イラクの人々は、占領軍こそ抑圧者であり、紛れもない侵略者であることを、体験を通じて理解したのだ。

不正義の侵略つづけるのか

 反対派を武力で一掃して行なう選挙が「自由で民主的」なはずがない。
 アメリカが武力で押さえつけようとすればするほど、その怒りは激しさを増し、イラク全土で、さらなる抵抗を呼ぶことになる。
 イラク攻撃に何の根拠も大義もなかったことは明白になった。「対テロ戦争」と叫ぶブッシュとその同調者は、この戦争が、不正義の侵略戦争だったことをごまかし、居座り続けている。
 イラクに平和な日がいつ来るのか。戦争後、消えてしまった子どもたちの笑顔をとりもどすためにも、占領軍のイラクからの撤退を一刻も早く実現しなければならない。

薬を待っている白血病の子どもたち

日本国際ボランティアセンター(JVC) イラク担当 佐藤真紀

ファルージャ攻撃まで支持した日本政府
「人道支援」といってももう通用しない

 一一月三日にブッシュ大統領が再選されるや、八日から米軍のファルージャ総攻撃が始まった。すでに一〇月 から、ファルージャへの攻撃は激しくなっていたので、私たちは医薬品や食料が不足することを予測し、何度か病院へ、緊急支援物資を送っていた。しかし攻撃 の激しさは、予想を上回った。

まず病院を占拠して

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 米軍とイラク暫定政府軍はファルージャを包囲すると、真っ先に病院を占拠してしまった。メディアは通常、 民間人の死者の数は、病院が発表するものを報道する。病院に収容されない遺体も多いから、それは最低の死者数といっていい。アメリカは、その数字すら公表 させないため病院を封鎖した。医者やスタッフは縛られて、床に転がされていたという。
 私たちのグループも赤新月社(イスラム系の赤十字社)の輸送隊に加わり、ファルージャに向かったが、米軍に阻まれ市内に入ることができなかった。
 米軍は「市内には一般市民はほとんどいない。病院にも患者はほとんどいないから、人道的な危機はない」という。その一方、殺した武装勢力は一五〇〇人を 超えると発表した。この数字が市民や子どもでないという保証はどこにもない。
 ファルージャからの複数のレポートでは、市中には死体が氾濫して異臭を放っているというし、証拠写真もインターネットで流れている。
 そんななか、今度は米兵が、負傷してモスクの中で横たわっているイラク人に銃を向け、「死んでるふりをしている」といって射殺した映像が報道された。民 間人かもしれない。ジュネーブ条約では、たとえ戦闘員でも、けがをして戦えなくなったらもはや戦闘員ではなく、保護されなければならないのだ。
 問題はこのようなアメリカのやり方を日本政府が完全に支持していることだ。「日本は人道支援をしています」といっても、もう通用しない。
 イラク人の対日感情も変化している。たとえ自衛隊でもイラクの復興のために汗水流してくれるのなら歓迎だ、といっていたイラク人も、「自衛隊は、アメリ カ軍の占領に力を貸すためにいるだけではないか」と疑いはじめている。その疑いは私たちNGOにまで向けられる。
 イラク人のNGOスタッフは「申し訳ないけど、支援物資を配るときには、日本からだとはいえません。私たちは感謝していますが、人道支援という名目で入 り込んでくるスパイだと受け取る人もいるからです。日本から支援を受けているなんていえない」という。

数百人の子が治療を

 JVCは、劣化ウラン弾の放射能が主な原因といわれている白血病の子どもたちへの支援も行なっている。治療を始めている数百人の子どもたち。薬が切れると、あっという間に死んでいく。
 国際社会が、支援するといって約束したのに、治安の悪化で薬がとどこおっている。なおさら私たちへの期待は大きい。私たちが約束している薬は毎月百万~ 二百万円。現地から必要な薬のリストを受けとると、ただちに、隣国のヨルダンで調達し、車を頼んでバグダッドの病院まで届けている。
 昨年死んでいった多くの子どもたちから学んだことは、命の大切さ。白血病の子どもたちが生きていくことは大変なのだ。それなのに、戦争は簡単に子どもた ちの命を奪っていく。そして劣化ウラン弾を使い続けているのだ。
 「死なないで、子どもたち」という思いを込めて活動を続けている。

いつでも元気 2005.1 No.159

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