MIN-IRENトピックス

2017年11月21日

フォーカス 私たちの実践 歯科技工士の働き 山梨・共立歯科センター ケア困難な重症患者 歯科技工士の関わりで、口腔状態を改善

 重度の障害や意識のない患者さんは口腔ケアが不十分な場合が少なくありません。山梨・共立歯科センターでは、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士で連携し、隣接する甲府共立病院に入院する重症患者さんの口腔状態の改善を図っています。それぞれの口腔内の状態や障害の程度に合わせて補てつ装置を調整し、食形態が改善された事例も。同センターの歯科技工士・中山誠一さんの報告です。

 共立歯科センターは、歯科ユニット二二台、常勤の歯科医師六人の歯科診療所です。歯科技工士は四人が常駐し、技工室を併設。当日の入れ歯修理にも対応するなど、多様な要求に応えています。
 近年、在宅や入院中の高齢者、障害者への歯科往診は広がりつつあります。一方、重度の障害を持っていたり、意識がない患者さんへの口腔ケアは遅れています。

補てつ装置を調整

 共立歯科センターでは、同法人で隣接する甲府共立病院の入院患者へ歯科往診を行っています。口腔ケアができていなかったり、補てつ装置がうまく機能していない患者さんに対し、往診した歯科医師の要請で、歯科技工士が直接患者さんの状態を見て補てつ装置を工夫し、口腔ケアを補助したり、嚥下障害を改善しています。
 これまで、こんな改善を行うことができました。
 【事例1】八八歳、女性。脳梗塞、末期腎不全、意識なし、挿管中。〔主訴〕舌をかんでしまう、口腔ケアが困難。〔問題点〕かみ込みが強く、挿管チューブで口蓋がえぐれている。口が開かない。〔対応〕型をとり、歯列に合わせたバイトブロック(口を開けた状態を維持する器具)の上下を透明樹脂で製作。飲み込み防止のため穴を開け、フロスを通してベッド柵に結びつけた。口腔ケアを行う病棟スタッフにバイトブロックの着脱方法、洗浄方法を指導。〔予後〕装着後はかみ込みが改善され、舌をかまなくなった。口が開くようになり、口腔ケアができるようになった。
 【事例2】八六歳、男性。アルツハイマー型認知症、意識なし。〔主訴〕強い食いしばりで自ら口腔内に裂傷をつくる。〔対応〕口腔内の型をとり、マウスピースを製作。〔予後〕口腔内裂傷を起こすことがなくなり、改善された。
 【事例3】八〇歳、男性。心肺停止蘇生後意識障害、人口呼吸器管理、肺気腫。〔主訴〕嚥下がうまくできない。〔問題点〕舌が口蓋に接触しないため、嚥下圧が足りない。〔対応〕既存の部分床入れ歯の口蓋部分にさらに樹脂を盛り、厚くし、舌が接触できるようにした。〔予後〕嚥下が改善、流動食がとれるようになった。
 【事例4】通院中の一二歳、男児。脳性麻痺によって障害あり、意識あり。〔主訴〕食物がうまく飲み込めない。〔対応〕口蓋舌接触補助床を製作した。〔予後〕作った補助床を使うと食物も飲み込みやすくなり、口蓋もスベスベになった。

装着後のケア方法も指導

 患者さんの口腔内の状態は一律ではなく、補てつ装置もそれぞれの状態に合わせて工夫しなければなりません。歯科医師と技工士で相談し、試作を重ねます。
 事例1では、患者さんのかみ込みの力が強く、最初に作ったバイトブロックは数日でヒビが入り、作り直しました。また改善した状態を維持するには、補てつ装置の適切な着脱や洗浄も必要です。病棟看護師や家族への指導も行っています。
 このとりくみで、患者さんや家族から「口の中の状態が良くなり、食べやすくなった」と好評です。さらに使いやすい補てつ装置を提供できるよう、技術の向上をめざしていきます。

(民医連新聞 第1656号 2017年11月20日)

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