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2017年11月30日

安心して住み続けられるまちづくり・石川 
寺子屋みのり どの子にも学ぶ喜びを

文・新井健治(編集部)  写真・亀井正樹

寺子屋は夜9時まで。窓辺から灯りが漏れる

 石川県健康友の会連合会金沢南ブロック(金沢市)は2年前から、無料の学習サポート室「寺子屋みのり」を開いています。
 寺子屋に通う小中学生30人の中には、家庭でうまく宿題に取り組めない子や、経済的な事情で塾を選択しにくい家庭の子もいます。

 木曜日の午後4時過ぎ、友の会交流ひろば「みのり」(金沢市若草町)に、小学生が続々と集まってきました。「お帰り」。寺子屋責任者の山下明希さんが一人ひとりに声をかけます。
 山下さんは3人の子どもの母親。「寺子屋にかかわり、経済的な理由だけでなくさまざまな事情を抱えた家庭があることを知り、地域の実態が初めて見えてきました」と言います。
 寺子屋では元教師の学習サポーターらが勉強を教え、見守りサポーターが子どもと一緒に遊んだり、おにぎりを作ったりします。
 小学5年の次男が通う木谷真理さんは4人の子がいます。「塾はお金がかかって大変。長女は寺子屋で数学が分かるようになり、希望の高校に進学できました。今は栄養士を目指しています」と語ります。
 小学生は学校の宿題が終われば、はやりの将棋やオセロ、トランプなどで遊び、最後はおにぎりを食べて思い思いに帰ります。

今の中学生は大変

 入れ替わるように午後7時過ぎ、中学生がやってきました。こちらは一転、真剣な表情。中間テストに向けて2時間、黙々と勉強に励みます。
 今の中学生は大変です。教科書の他にワーク(問題集)や課題ノートなどの副教材、さらにはプリント類など大量の教材が配られます。
 全国学力テストの復活に伴い、昔の中学生とは比較にならないほどこなさなければならない課題が山積み。しかもワークやプリントを提出しないと、内申に響きます。何から手をつけていいのか分からない子も。
 寺子屋で教える元中学教師の小島和美さんは「学力テストで1点でも多く取るため、過去問を解くことを優先。生徒は分かる喜びを得ることができなくなっている。テストは生徒だけでなく、先生も縛っている」と指摘。
 同じく元中学教師の伊達祥子さんは「つまずいている箇所を教えれば、子どもたちはスーッと分かるようになる。先生たちも皆さん、楽しそうに教えています」と言います。

安心できる居場所

 寺子屋ではクリスマス会や卒業・進級を祝う会、家庭菜園など勉強だけでは得られないさまざまな体験も提供しています。
 この日は元小学教師の安原昭二さんが紙芝居を披露。拍子木を使った本格的な上演に子どもたちは夢中です。「今の小学生は音読の宿題で本を読むことを強制される。『物語っておもしろいな』と感じてもらえれば、自然に本が好きになる」と言います。
 現役時代は〝ヤッシー〟の愛称で親しまれた安原さん。「学校の個人面談で『忙しすぎて子どもに何もしてあげられない』と泣くお母さんもいた。わずか10分でも、団らんの時間を取れない家庭もある。お父さんもお母さんも働かされ過ぎで、親子ともども〝気持ちの落とし場所〟がない」と子どもの背景にある社会問題を指摘します。
 交流ひろば「みのり」は民医連の健生クリニック(内科・小児科)の向かいにあります。寺子屋は週1回ですが、みのりでは、友の会が体操教室やうたごえなど、毎日何らかの活動をしています。
 「どこにも行くところがないな~って時は、みのりに行くの」。午後7時や8時まで、ここでお母さんの帰りを待つ小学生の姿も。みのりは子どもたちの居場所にもなっています。
 金沢南ブロック責任者の木村吉伸さんは「学習支援をしている私たちが、個々の家庭事情にどこまで踏み込んでいいのか。地域で子どもを支える仕組みをどのようにつくるのか、それが今後の課題です」と話しました。

いつでも元気 2017.12 No.314

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