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2017年12月5日

フォーカス 私たちの実践 薬を見直す富山・ふれあい薬局千石町店 診療所との連携で、ポリファーマシーの解消をすすめる

 「ポリファーマシー」とは、多剤併用のことです。その原因には、高齢になると複数の慢性疾患を持ちやすいことや、症状が収っても漫然と処方され続けているケースなどがあります。多すぎる薬は、患者さんが正しく服用できない問題にもなります。富山・ふれあい薬局千石町店では、隣接診と連携して不適切なポリファーマシーを解消するとりくみを行いました。第一三回学術・運動交流集会で、薬剤師の高橋美和さんが報告しました。

 ふれあい薬局千石町店は富山市の中心部にあり、薬剤師三人、事務二人の薬局です。隣接診は、内科と整形外科を標榜する富山診療所(富山医療生協)で、同診が発行する処方せんは全体の六九%です。その他にも多くのクリニックの処方せんを応需し、一日の処方せん枚数は約三五枚です。
 富山診療所とは開局以来「薬診会議」を月一回行い、気になる患者の情報共有などにとりくんできました。その中で、薬をたくさん飲んでいる患者さんが多いことが話題になり、ポリファーマシーに対するとりくみを始めることになりました。

情報提供書を使って

 まず、薬局で外部講師を招きポリファーマシーについての勉強会を複数回実施。その後、薬剤師が講師として診療所の全職員を対象に勉強会を開催、とりくみの周知を行いました。
 手順は次の通りです。まず、薬剤師が「薬が多いな」「なぜコレを飲んでいるの?」などと疑問を持った患者さんに対して、(1)服用していない薬がある、(2)薬を減らしたい、(3)薬が効いているか分からない、(4)症状が無くなっている、(5)なぜ飲んでいるか分からない、などがないか、薬を渡す際に確認します。どれか一つでもあれば、患者さんに詳しく聞き、同意が得られれば「情報提供用紙」(左)に詳細を記入。診療所に送ります。診療所では、患者さんが次回受診する時に、必ずこの用紙が医師の目に留まるようファイルの先頭に入れています。
 医師からの返事を確実にもらうために、用紙の下部に返答欄を作成。返答が書かれたら、薬局に送り返してもらうようにしました。

ていねいな対応が大切

 二〇一七年二月からとりくみを始め、応じたのは一一月時点で三〇人。減薬が一七人、薬剤の変更が五人、定期から頓服へ変更は二人、薬剤変更後に減薬が一人、変更なしが三人、その他は医師の回答待ちです。二回以上対応した患者さんは三人でした。
 年齢は、八〇代が二〇人、七〇代四人、六〇代一人でした。高齢になるほど、ポリファーマシーになりやすいことが分かりました。また、対象の約半数が往診患者さんで、医師や薬剤師がていねいに訴えを聞き出すことが大切だと実感しました。
 患者さんの訴えや状況は図の通りでした。副作用については、腎機能悪化も含めると八件になり、高齢者の副作用発生はかなり多いと分かりました。また、「経済的理由」が挙がったことは、無料低額診療にとりくむ民医連ならではの事例でした。

*     *

 とりくみの中で、減薬への不満はほとんど出ませんでした。むしろ「お医者さんには言い出しにくいので、専門知識のある薬剤師さんが話してくれるとありがたい」という患者さんがいました。
 さらに診療所では、患者本人が医師に減薬の相談をすることが増えたそう。医師は「必要のなくなった薬を減らすことを常に意識しないといけない。簡単にはすすまないが、定期から頓服を経て減薬するなど、減らすことへの患者の不安に寄り添い、信頼関係を築いていきたい」と、今後も継続することを話してくれました。
 薬局ではこの他に、待合室にポスターを掲示し、患者さんに気づいてもらえるよう工夫しています。今後は、隣接診だけでなく、民医連外の病院、診療所にも広げていきたいと考えています。

(民医連新聞 第1657号 2017年12月4日)

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