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2017年12月5日

「総がかり」で守ろう いのち くらし 日本医療労働組合連合会 委員長 森田しのぶさん 命と健康を守る― 「戦争協力拒否」労使で合意

 総がかりで社会保障を守ろう―。今回は日本医療労働組合連合会(日本医労連)の森田しのぶ委員長です。全国の医療現場で、戦争協力を拒否する労使共同宣言・労使協定を結ぶとりくみをすすめています。(丸山聡子記者)

 私は、京都の第一日赤病院の看護師として働いてきました。先輩看護師から、太平洋戦争での経験を何度も聞きました。
 戦況が厳しくなると日赤病院は軍の支配下、終戦後しばらくは進駐軍に接収され、一般診療は旧宮邸で行ったそうです。医師、看護師も大量に戦地に送られ、命を落としました。一九四一年に全国に四八五八カ所あった病院が、終戦時には六四五カ所に激減するなど、戦争は国内の医療体制を壊滅状態にしました。
 日本医労連は一九五七年に結成し、基本的な考えとして、「ふたたび白衣を戦場の血で汚さない」を確認しました。平和でなければ、患者さんの命と健康を守れません。私たちが戦争協力を拒否するのは、医療者としての原点です。
 一昨年の戦争法(安保法制)の強行採決以降、かつてのようなことを繰り返してはならないと、「戦争には協力しない」意思を示す労使共同宣言、労使協定にとりくんでいます(資料)。一一月現在、全国一一三の職場で労使共同宣言と労使協定を結んでいます。

事業所と医療者を守る

 戦争法のもとで海外に派遣された自衛隊が深刻な被害を受けた場合、医療従事者は戦地で重要な役割を担います。自衛隊の医官、衛生官が派遣され、場合によっては指定公共機関(公立、民間)の医師・看護師には協力要請も行われます。
 もともと医療機関は公共性が高く、国や自治体からの協力要請を、理由も示さず拒否することは困難です。しかし、事前に「戦地への派遣協力要請があった場合には、労使で話し合って判断する」と協定を結んでいれば、行政は無視できません。労使共同宣言や労使協定は、一人ひとりの医療労働者を守ると同時に、医療機関にとっても職員の派遣にストップをかけられる根拠となるのです。
 国際赤十字は紛争地に医療従事者を派遣しています。この活動は「中立」の立場が前提。どちらのけが人かは問わず、等しく治療します。派遣先で医療者に危険が及ぶことがないか調査し、派遣は個人の意思を尊重。現地に赴いた後でも、意思は撤回可能です。
 こうした医療活動と、日本政府の要請に基づき自衛隊のもとで行う医療活動はおのずと違ってきます。
 先の戦争で従軍した先輩看護婦たちは、「女性でもお国のために役に立ちたい」と看護婦になりました。しかし現実は違いました。ある人は、「一生懸命看病して元気になった兵隊さんが、『死にに行ってきます』と笑顔で退院していった姿が忘れられない」と話しました。ケガや病気から回復した人を、命を奪われかねない戦場に送り出す―。国が私たちに求めていることは、まさにこれではないでしょうか。医療者としてあってはならないことです。

社会保障削減に抗して

 戦争に突きすすむ時、必ず医療や社会保障が削られます。診療報酬が引き下げられ、医療制度改悪も相次ぐもとで、医療現場の忙しさは極限状態にあり、働く人たちは疲弊しています。
 しかし、大変な時だからこそ、悲惨な戦争の反省から生まれた憲法を学ぶ必要がある。短時間で憲法を学べる組合員向けリーフも作り、普及しています。患者さんのためにも、良い医療を提供するためにも、私たちは政治の動きに敏感でなければなりません。


※資料 「安保関連法」に関する協定(例)
(中略)第3条 病院及び労働組合は、「安保関連法」に基づく協力要請があった場合、速やかに労使協議会を行い、その判断と対応については、労使合意のもとに行うものとする。

(民医連新聞 第1657号 2017年12月4日)

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