MIN-IRENトピックス

2017年12月29日

安心して住み続けられるまちづくり・新潟 
お寺に236人 にしっ子食堂

文・奥平亜希子(編集部)  写真・酒井猛

 2016年9月に始まった新潟市西区のこども食堂「にしっ子食堂」の会場はお寺。
 坂井輪診療所健康友の会のメンバーも実行委員会に入り、運営を担っています。

 子どもたちが会場の護念寺に集まり始めるのは午後4時過ぎ。
 「信仰は自由ですが、入るときには本堂で手を合わせるのがルール」と、実行委員で友の会員の川上真紀子さん。母親が声をかけ、静かに手を合わせる子どもたちの姿がありました。
 午後5時を過ぎると、本堂からにぎやかな声が聞こえてきます。紙ひこうきやお手玉を梁に向かって高く投げたり、柱をよじ登る子もいて大騒ぎ。笑い声と叫び声の向こうには、光り輝く御本尊が…。

学生も手伝いに

 食堂を始めようとしたとき、一番の課題は「場所」でした。坂井輪診療所も候補の1つでしたが、広さや設備などが足りません。そこで、保育園園長も務める護念寺の細川好円住職に「お寺を借してほしい」と相談すると快諾。一気に話が進みました。細川住職は「寺は地域のためにある。それなのに、1年のうち300日は空いていて、もったいないと思っていました。文化教育の場として、誰でも気軽に寄れるのが本来の寺の姿。ここでは騒いだり走り回ってもいいんですよ」と、にっこり。
 にしっ子食堂のボランティアには10代の若者も。保育士を目指し勉強中の川崎幸祐さんは新潟青陵大学短期大学部の1年生。大学入試に「こども食堂について」のディスカッションがあると知り「それなら実際に行ってみよう」と出会ったのが、オープンを翌日に控えたにしっ子食堂でした。合格後も毎回休まず参加。さらに、川崎さんの声かけで、大学生や高校生も学校終わりに駆けつけてくれます。

診療所も縁の下の力持ち

 「食堂運営にはコープにいがたの協力が大きい」と語るのは、実行委員会事務局長で友の会員の赤井くるみさん。
 実行委員会と同コープは、賞味期限内でもルールで廃棄処分になる肉や魚を提供してもらう契約を結びました。ほかにも、農民連からお米、地域住民や護念寺の檀家さんからは家で採れた野菜や果物が差し入れられます。
 「食材は坂井輪診療所に保管。搬出時に職員が手伝ってくれて助かります」と赤井さん。所長の安達哲夫医師は「あまりお手伝いはできなくて」と申し訳なさそうですが、赤井さんは「家に置ける量の食材ではないし、運び出しも私たちだけでは大変。資金集めのフリーマーケットを開いたり、寄付をいただいたり。診療所の協力なしには運営できません」と話します。

200食以上を手際よく盛りつけ

200食以上を手際よく盛りつけ

誰もが集える場に

 護念寺の周辺には新興住宅があり、小学校の新設が計画されるほど若い世代の家族が多くいます。
 こども食堂は当初、貧困対策の一環として開設しようと話し合われていました。しかし「“貧困”を掲げたら、本当に困っている人は入りにくいのではないか。誰もが集える場所にして、その中に困った人がいたら相談に乗れるような関係づくりを目指したい」と川上さんは語ります。
 1週間の疲れが溜まる金曜の夜、護念寺に行けば温かいご飯が食べられる。誰かに会えて、子どもも遊べる。あとは帰って寝るだけ。にしっ子食堂の存在は、毎日を忙しく過ごす親にとっても、つながりと安らぎを得られる場所になっています。
 取材した11月10日の参加は過去最高の236人で、片付けを含めると7時間超の長丁場。ミーティングでは「さすがに疲れたね」の声。しかし、表情は晴れ晴れ。食堂は地域の拠り所として「どの子も大きく、丈夫に育て」と願う人たちに、大切に育まれています。

いつでも元気 2018.1 No.315

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ