いつでも元気

2005年3月1日

元気スペシャル イラクの子らに確実に薬を

アンマンからのレポート(1) ヨルダンに押し寄せる白血病の患者達たち

 昨年一二月六~一一日、イラクへの医療支援を調査するため、全日本民医連事務局の大河原貞人次長が、日本国際ボランティアセンター(JVC)の佐藤真紀さんに同行し、イラクの隣国ヨルダンの首都アンマンに飛びました。
全日本民医連事務局次長 大河原貞人

 戦争「終結」後、武装勢力の一掃と称する米軍の攻撃は激しくなり、治安が悪化する一方のイラク。医療支援は、ますます必要になっていますが、混乱のな か、薬品を確実に届けることはできるのか。
 この間、全日本民医連は、JVCや「アラブの子どもとなかよくする会」と交流し、その支援活動が信頼できるものだと確信を深めてきましたが、今回はその 活動の実際を見せてもらうことが目的でした。
 当初は、昨年一月の日本平和大会でイラクの実情を訴え、人道支援募金運動のきっかけをつくったアル・アリ医師(サドル教育病院がんセンター所長)もアン マンにみえる予定でしたが、ヨルダンとイラクの国境も治安が悪化し、これなくなってしまいました。

危険を承知の上で手助け

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薬の荷造りに立ち合う大河原さん(左)と西村さん(右)

 アンマン到着後、「なかよくする会」の西村陽子さんと合流。昨年JVCなどが立ち上げたJIM・ NET(日本イラク医療支援ネットワーク)では、メンバーが交代でアンマンに滞在してイラクに薬を届けています。いまは西村さんが滞在し、現地の人の協力 を得て遠隔操作をしています。ちょうど、バグダッドの病院から依頼された薬を手配していたところで、その現場に立ち合い、協力者のお二人とも懇談すること ができました。
 薬局経営者のHさんが買付け担当で依頼された薬を準備し、西村さんが現物を確認。運送会社経営のMさんがイラクまで搬送し、イラク国内では現地ボラン ティアが受け取って病院に運ぶ。届いたら病院から、メールか電話で確認がくるというシステムです。
 HさんもMさんも精力的な商売人ですが、危険を承知で手助けしてくれており、その実績や人柄から、信頼できる確実な支援ルートであると思いました。約五 〇万円する薬も、クーラーボックス一個に入ってしまい、Mさんはまるで、釣りにでも行くように出かけていきました。

王室や俳優の基金で治療

 ヨルダン王立キングフセインがんセンターでは、白血病の治療支援プロジェクトをつくり、イラクの白血病の子どもを無料で受け入れ治療しているとのこと。
 アンマンのはずれにある同センターを訪ねると、玄関を入ったとたん、サルマちゃん(10)のお母さんに会いました。サルマちゃんはイラクから治療で来て いて、佐藤さんとは顔見知り。お母さんは「きのう、バクダッドからバスで出てくる途中、アリババ(強盗)に襲われたの。銃で脅され、有り金全部盗られてし まった」と、待合室で回りも気にせず大声で訴えます。私たちはとりあえず手持ちのお金をカンパして励ましました。
 同センターで援助をはじめたのは、「湾岸戦争後、イラクで白血病や小児がんが目立って増え、多くの子どもが亡くなっている」という訴えが、ヨルダン女王 にあったため。九七年、女王がヨルダンの金持ちに募金を呼びかけました。米国俳優のポール・ニューマンや王室も独自に基金をつくり、〇三年四月から四八人 の治療をしている(うち三人死亡)とのこと。政府が一六人、ポール・ニューマンが一四人、王室が四人の費用を出し、自費の人も一四人。家族もふくめ滞在中 の生活費も援助しているそうです。

一番の悩みはお金集め

 小児科の責任者・ファリス医師は、「治療は、治る見込みのある子に骨髄移植や抗がん 剤投与など、一~三カ月を一単位として行ない、三年間継続する予定でいる。患者については、イラクの病院がイラク保健省に申請した患者を受け入れている」 「イラク人医師一三人、看護師一〇人を受け入れ、研修も行なっている」と語っていました。
 広報担当のルーラさんは「イラクから白血病の患者が直接押し寄せてくる。でも各基金は底をつき、一番の悩みはお金集め」といっていました。
 「イラクへの自衛隊派遣費の百分の一でも回せば、立派な国際貢献ができるのに」と、小泉政権の戦争政策に怒りを覚えます。

JVCの活動に深い信頼

 私の現地滞在は実質三日間。実感したのは、JVCの中東での活動が、国連事務所の人たちをふくめ、現地で深く信頼されているということです。ヨルダン内のNGOなどとも連携して、厚みのある活動になっていました。
 被爆国日本の医療人として、劣化ウランによると見られる白血病・がんの多発は見過ごすことはできません。ボランティアの専門家と手を組み、息長く医療支 援に取り組まなくてはと思いました。

いつでも元気 2005.3 No.161

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