民医連新聞

2018年1月23日

相談室日誌 連載437 総合事業の影響受けたAさん夫婦(千葉)

 Aさんは公営団地に夫と二人暮らしです。三〇年以上、うつ病の闘病中で、要介護3と認定されています。精神的に不安定なため、限度額一杯まで訪問看護や訪問介護を利用中です。
 今春、元気だったAさんの夫が心疾患の治療を受けるようになり、掃除や買物の家事支援でヘルパーを利用するため、介護保険を申請し「要支援1」と認定されました。早速、Aさんが利用中の介護事業所へ相談しましたが、「対応が難しい」と回答がありました。
 事業所の回答の原因は、今年度から施行された「介護予防・日常生活総合事業」にあります。これまで全国一律だった訪問介護や通所の介護サービスを、「要支援者」については、市町村が自由に決めて運営することになりました。「現行相当型」と「基準緩和型」(無資格者でもよいなど人員基準が緩和)と「住民主体型」(有償・無償のボランティア)の大きく三つに類型され、「基準緩和型」は介護報酬が「現行相当型」よりも低く設定されています。さらにAさんが住む自治体では、家事支援だけ利用する場合、「現行相当型」は利用できず、「基準緩和型」しか選べません。事業所は今までと同じサービス(家事支援)を提供しても、減収となるため、二の足を踏んだのです。
 Aさんの夫には「基準緩和型」に対応する別の事業所をすすめていますが、複雑な総合事業の理解は難しく、怒るばかりで話がすすみません。怒りは妻を思えばこそ。新しい事業所のヘルパーは妻の精神的負担になる、だから自分ががんばるしかない、と考えているのです。
 介護保険制度は三年に一度、改定することが介護保険法で決まっています。制度開始時にうたわれていた「利用者主体」はどこへ? 改定のたびに複雑で使いづらい制度へ変わってきました。
 保険料や利用者負担増、報酬の低さなど、問題が山積する介護保険制度ですが、実態をSWの目線で捉え、あきらめずに現場からの声を上げ続けていきたいと思います。

(民医連新聞 第1660号 2018年1月22日)

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