民医連新聞

2018年2月6日

こたつぬこ先生の社会見学~3・11後の民主主義 (10)韓国にとってのオリンピック

 2月9日から、韓国・平昌で冬季オリンピックが開催されます。このオリンピックをめぐっては、北朝鮮が急きょ参加を表明し、朝鮮半島和平のカギを握るのではと大きな注目を浴びています。これに対して日本の一部マスコミなどから「五輪の政治利用だ」という非難があがり、「北朝鮮への最大限の圧力」を唱える安倍総理は1月末現在、参加するかしないか迷っていました。政治を持ち込もうとしているのは安倍さんの方じゃないかというツッコミはさておき、確かに韓国におけるオリンピックは、同国の民主主義政治の歴史と深く結びついています。
 ソウルオリンピック(1988年)の前年、韓国は民主化抗争が起こり、ソウルに結集した100万の市民たちにより6・29民主化宣言が出され、長く続いた全斗煥(チョン・ドゥファン)独裁体制を崩壊させた活動家たちはソウルオリンピックを利用しました。オリンピック開催で国際社会の注目を浴びることで、政府の人権侵害もまた注目されるからです。
 1987年6月の民主抗争は翌年のオリンピック開催を困難に陥れ、全斗煥独裁政権はデモに譲歩せざるを得なくなりました。そして韓国民主化運動は、大統領直接選挙制度を勝ちとり、勝利したのです。このようにソウルオリンピックは韓国の経済的躍進と民主化の象徴となりました。
 そして歴史は繰り返すのか、昨年韓国は民主化抗争で権威的な朴槿恵(パク・クネ)大統領を打倒しました。奇しくも2017年は87年の民主化抗争の30周年にあたり、韓国の民衆は、1972年からはじまる韓国の独裁体制をつくりだした朴正煕(パク・チョンヒ)の娘であり、その亡霊のような朴槿恵大統領をふたたび打倒し、民主活動家である文在寅(ムン・ジェイン)大統領を迎え、いままたオリンピックを迎えようとしているのです。
 そもそも従軍慰安婦問題も、こうした韓国の民主化があったからこそ、政治・外交化しました。それまで韓国の独裁体制と日本の保守政治が結託し封じ込めていた歴史問題を民衆が解き放ったからこそ政治問題化しました。つまり韓国民衆にとって従軍慰安婦問題は歴史問題であるとともに民主主義の問題なのです。
 かつてソウルオリンピックがそうであったように、平昌オリンピックも東アジアの平和と民主主義の象徴になるのでしょうか。もし安倍総理が平昌オリンピックに参加しなかったとしたら、それはこの30年の東アジアの変化を顧みて、象徴的な意味をもたざるを得ません。東アジアの民主化に目を背け、東アジアの平和に目を背け、世界の流れから日本が外れていく象徴としてその名が歴史に刻まれることになるでしょうから。

こたつぬこ:本名は木下ちがや。政治学者。大月書店から『ポピュリズムと「民意」の政治学:3・11以後の民主主義』絶賛発売中!
Twitterアカウント@sangituyama

(民医連新聞 第1661号 2018年2月5日)

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