いつでも元気

2005年5月1日

救急車たのんだら10万円の請求が! 民間活用や有料化東京発の悪政 全国に波及の心配

東京では民間救急コールセンターの試行で
患者の搬送めぐりトラブル続出

 (仮想状況)「朝6時ごろ、あなたは、胸から肩にかけて、冷や汗が出るような強い不快感を感じました。症状が次第に強くなってきています。(救急 車を呼ぶと、使用料が2万円かかります)」「問15 救急車を呼びますか」「1、呼ぶ 2、呼ばない」・政令指定都市の横浜市で昨年九月、こんなアンケー トが市民に配られました(下表)。
 あなたなら、どう答えます?

問15 救急車を呼びますか。
  1.呼ぶ 2.呼ばない
問16 問15で、「1.呼ぶ」と回答された方にお聞きします。それは、「たぶん」ですか。「確実に」ですか。
  1.たぶん呼ぶ 2.確実に呼ぶ
横浜市が行った「救急に関するアンケート調査」(部分)

 この問題を、日本共産党の小池晃議員が、三月一八日、参院厚生労働委員会で取り上げました。
 「この症状は急性心筋梗塞で、一刻を争う。こういう状態を、救急車の有料化の対象として考えること自体が非常識」と小池議員。昨年まで民医連の病院で診療にあたっていた医師でもあります。
 アンケートはさらにこんな仮想状況を設定しています。「夜八時ごろ、子どもがお腹を強く痛がった。嘔吐も見られ、痛みも強くなってきている」「同居して いるお年寄りが下腹部に沸騰したお湯をかけてしまった」・・「この症状はいずれも重症」と総務省消防庁の東尾正次長が答弁しているように、救急車を呼ぶの をためらっていたら、命を落としかねない状態です。横浜市では、二万円だけでなく、千円、三千円、五千円といろいろな設定でアンケートを集計。有料化を念 頭においた具体的な調査です。

総務省も「民間の活用」をと

 東尾次長は総務省として、「有料化を前提とするものではない」としながらも、「緊急度についての考え方の再整理」や「民間事業者の活用」をふくめ、幅広く検討をすすめると答弁しました。
 「こんなことを検討されたらたまらない。医療現場は大混乱する」と小池議員。
 東京では実際にこんなことが起こっています。
 昨年一一月二二日朝、東京・杉並区上井草診療所で、九一歳の男性が急性心筋梗塞と診断されました。患者を東京女子医大へ搬送するよう消防署に電話した看護師は、その応答に驚きました。
 「いま救急車が出払っている。かけつけるには四五分かかる。民間救急コールセンターを呼んでほしい」というのです。あまりにひどい対応に応対者の氏名を 聞き、押し問答の末、やっと救急車がきてことなきを得ました。
 夕方、釈明にきた消防署員は「一〇月から、緊急でない場合はできるだけ民間救急(民間救急コールセンター)を紹介することになっている」「救急車の出動 依頼の時は、緊急である旨を伝えるように」といいます。多和兼利事務長は、カルテなどを見せ「けさの患者搬送は緊急だった。命を守る職務であることを謙虚 に受け止めてほしい」と要求しました。

“救急”とは名ばかりで

 都内ではほかにも、結核患者の転院搬送を依頼したら「転院に救急車は使えなくなった。民間救急を紹介する」といわれた(足立区Y病院)、透析中に脳梗塞 の疑いがでた患者を搬送するとき、医師が同乗しないとわかると「民間救急で」といわれた(羽村市H診療所)などの例が相次ぎました。結核患者の事例では 「消毒のため救急車が丸一日使えないからその分の費用も」と、一〇万円請求されました。
 この原因は、東京都が昨年一〇月から「民間救急コールセンター」を試行したためです。病院・診療所から、他の医療機関への搬送や入退院の搬送が申し込ま れると、東京消防庁認定の民間事業者を案内し民間救急車が運ぶシステムです。
 有料で、業者によって差がありますが、出動から帰るまで三〇分間三五〇〇円、三〇分増すごとに三千円(ストレッチャーや介護料、消費税は別)が一般的。 しかも制限速度厳守で、信号は一旦停止、サイレンも鳴らせない。蕫救急﨟とは名ばかりです。
 東京消防庁は、民間救急導入の理由に、「救急需要がここ数年、毎年三万件のペースで増加している」「〇四年の救急出動件数が六六万件に達している」こと などをあげ、「増大する救急需要を抑制し、都民への救急サービスを確保するため」としています。
 じつは東京都は、〇三年一〇月に策定した「第二次財政再建プラン」ですでに「受益者負担の適正化の観点から、転院搬送の場合の一部有料化なども視野に入れる必要がある」としていたのす。

東京の救急車台数は全国ビリ

 東京民医連では①緊急か否かは医師の判断によること、②医師が救急車に同乗するのかどうかは現場医師の判断を尊重することなどを求め、都や東京消防庁へ 要請し、東京都医師会とも懇談しました。
 東京民医連事務局次長の前沢淑子さんは、「東京は、歳費中の消防費の割合が全国47位(対歳出決算総額)、救急車台数(10万人当たり)も47位で最下 位。そして、年間救急出動件数(人口千人当たり)は1位です。年間予算を増やさないと問題は解決しません。働いている救急隊員から、過労死寸前という悲痛 な声も聞いています」といいます。
 この四月から、民間救急コールセンターは本運用に。東京民医連は、「本運用の取り止めと救急医療の充実・体制確立」を求めた石原知事宛の請願署名に取り組んでいます。

都議選の争点にも浮上

 都議会では主会派(自民、公明、民主、生活ネット)が与党の石原都政。「平成一七年度重点事業」に、「救急活動における民間参入」を掲げています。与党 各党は民間参入促進に熱心で、「各地で広がる民間救急車」(公明新聞2月3日付)と、自慢しているほど。
 「東京発の悪政が全国に普及しようとしています。救急体制は命にかかわる問題です。何としてもくい止めなくては。六月の都議会議員選挙が、当面、大きな たたかいの場になります」と前沢さんは語ります。太田候一記者

いつでも元気 2005.5 No.163

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