MIN-IRENトピックス

2018年3月20日

3日目 分散会報告 13会場で934の発言 方針案を豊かにする討議

 総会三日目には、前日に行った一三の分散会のうち、第九、第一〇、第一三の三分散会からそれぞれ討議の様子を報告しました。概要を紹介します。

第9分散会 大島民旗代議員

全世代に広がる貧困 共同組織とともに地域へ

 今も四万人の震災避難者がいる熊本では医療費免除が打ち切られ、仮設訪問調査では「今まで通り通院できない」が二三%。被災して転居し孤立、介護疲れで夫が妻を殺害した事件では、「この妻は自院の患者だった」と看護師の代議員が涙を流しました。大阪の病児保育の保育士は、利用者の三二%がひとり親世帯、非課税世帯は四三%、と報告。岡山のケアハウスでは生活保護の入居者がゼロから五人に急増、北海道の冬季高齢者生活調査では、凍死の危険がある室温一〇度以下で生活する人が一割、大分健生病院小児科からは、発達障害の子が就学後、自己負担が発生し外来リハビリを中断するなど、全世代の貧困の実態、制度の不備が明らかになりました。千葉からは、看護奨学生六五人中ひとり親世帯が一八%、学生本人がシングルマザーは六%で学費が払えない、との報告でした。
 病院からの患者追い出し政策で、低血糖を起こすたびヘルパーと看護師の緊急対応が必要な重症患者が在宅にいる(宮城のケアステーション)、三割が胃ろう注入食、認知症Ⅳ以上が六割で転倒事故や医療処置が増加している(京都の老健施設)などが起きています。福岡では、重症者へのリハビリが年間一五〇〇万円減点査定。九〇歳以上のリハは二~三単位しか認めず憲法違反だと告発が。
 共同組織とともに歩む重要性も確認しました。栃木では毎月二回の組合員訪問を組合員と職員で年四〇〇件以上行い、北海道勤医協は友の会と職員で六年連続一万件の訪問と自治体交渉を実施。埼玉ではHPHの評価項目に独自にまちづくりの視点を追加、長野は県連としてリハビリ職員が友の会員宅を訪問し、高齢者の実態に気づきました。また共同組織の担い手の高齢化でニュースが配れず、大腸がん検診件数が減少との報告も。
 職員の成長には知る、学ぶが不可欠です。石川の有料老人ホームは毎年入所者の戦争体験を聞き、「憲法宣言」を作成。神奈川では無保険で受診できない糖尿病患者について検討し、民医連看護の確信になった、鳥取のリハビリ職員がSDHを学び患者を診る視点が変化、青森では調剤薬局の事務職員が困難事例交流集会を開催、大阪の病児保育所は併設の診療所と情報共有し気になる家庭の生活困難がわかり、親同士のつながりを作った、との報告。奈良から県連医活委員会の報告もありました。
 民医連経営を守る点では、幹部が変わることで大きな変化を起こした大阪の二〇〇床規模病院、連携強化と介護の質にこだわり黒字化した東京の看護小規模多機能の経験などを共有しました。

第10分散会 山本明広代議員

9条改憲の中身知らせ 3000万人署名広げよう

 医療・介護現場での実践やとりくみから発言がありました。
 発言の多かったテーマの第一は、権利としての社会保障を守るとりくみです。東京の代議員は、院外薬局で薬代に関して困難を抱えた事例を報告。糖尿病の女性患者でインスリンを含む処方が連続しており、聞くと、糖尿病の息子が非正規雇用で社会保険に加入できず、国保料も払えず自費診療、女性の薬を親子で共有していました。SDHを意識する活動の中で職員のアンテナが高くなり、患者の背景が見えてきた、との発言でした。
 埼玉からは、児童虐待の背景に母親自身が幼少期に親の愛を受けていないことがあった、などの事例を紹介。困難を抱えた患者の生活背景を深く掘り下げてとらえる視点の大切さを確認しました。
 無料低額診療事業についての発言も多数。無低診の患者の自宅訪問や、ソーシャル・バイタル・サインの調査を共同組織ととりくんだ経験などが報告されました。
 二つ目は憲法を守るとりくみと三〇〇〇万人署名について。「九の日宣伝」や民医連新聞号外「憲法Cafe」を使ったとりくみが報告されました。岩手の代議員は、総選挙後に行った職員アンケートについて報告。回収率八六%で、うち八〇%は「選挙に行った」と回答。「憲法九条改定が必要だと思うか?」の質問には、約三〇%が「自衛隊の明記は仕方ないのでは」と答えました。戦争法には九〇%以上が「反対」でしたが、災害救助にあたる自衛隊は被災地では特別な存在かもしれない、と考えたとのことでした。
 三〇〇〇万人署名のとりくみでは、職場内の思いをくみ取り、理解を得るための努力が必要です。安保法制=戦争法が成立・施行され、自衛隊を憲法に明記すれば、制限なく武力を行使する自衛隊を合憲化し、災害救助をしていた自衛隊が、海外で人の命を奪う組織に変わると理解してもらうことが大切だ、という発言でした。
 三つ目は職員育成。福岡・千鳥橋病院で新入職員が「地域フィールドワーク」を行い、地域レポートをまとめるとりくみ、会計窓口でのやりとりから学ぶ事務交流会や歯科衛生士の全国交流会を初開催した、との報告も。鳥取の代議員は、役職者の沖縄平和研修について報告。管理医師一〇人を含む役職者約八〇人が対象で二泊三日。今年度は二クール、二六人が参加し、来年度は三クール、約五〇人を計画しています。参加者からは「現地で自分の目で見て肌で感じて考え、改めて他人事ではないと感じた」との感想が寄せられています。

第13分散会 須田倫子代議員

経営やまちづくりも多職種で知恵出し合って

 「情勢・憲法」では、京都から「師長集団でとりくんだ憲法カフェ」の報告。民医連新聞号外「憲法Cafe」を師長会議で読み合わせ、政治と医療と民医連が関連していると知り、自ら考えを述べるように変化。管理者が三〇〇〇万人署名の推進者になっています。
 「医療活動・介護活動」では、和歌山から、貧困・格差の広がりから自宅に帰せない事例が増え、看護師の退院支援の業務比重が高まり、現場が疲弊。三カ月間の訪問看護を在宅研修としてとりいれ、生活と労働の場で患者をとらえ、看護師が病院での役割と民医連らしさを感じられるように成長したとの報告でした。群馬からは「オーラルケアチーム(OCT)活動」について発言。病棟ラウンドの実施、摂食嚥下のチェックなど三年間の活動で誤嚥性肺炎を防いでいます。
 「まちづくり」では、沖縄から事業所のない離島での支部づくりを報告。離島の八重山と宮古島で支部づくりにとりくみ、一一月に八重山支部が誕生。事業所がない離島だからこそ医療生協を大きくし、健康で明るいまちづくりと地域での協同の輪を広げています。
 「経営」では、長崎からリハビリ部門の経営管理について発言。セラピスト一人あたりの目標稼働高を設定。毎月の予算管理で職員の奮闘を客観的に評価できる指標となり、職員の奮闘を職場全体で共有する大切さを強調しました。
 「職員の確保と育成」では、山口から「事例を通して憲法の大切さを学んだ」とりくみ。未収金が一〇〇万円以上あった患者が交通事故で入院し、過失割合の関係で自費対応に。厚生労働省まで問い合わせ、求償制度を適用できました。粘り強く行動し、制度を学ぶ大切さが浮き彫りになりました。
 大阪から離職率五〇%の介護事業所の報告。事例を学び合い、育ち合うとりくみを始めています。
 急速に人員増となったリハビリ分野の職員育成について意見交流。介護職の人員不足が事業に影響し、費用負担の重い紹介会社の利用も増えているとの報告も。
 「医師・医学対」では、青森は奨学生一人ひとりに丁寧に対応し、子ども食堂に参加する中で学生が貧困の問題に触れ、医学生ゼミナールで発表しました。二つの柱を担う医師を育てる活動につながっています。弘前で開催する医ゼミに向け、医学生運動のコアになる奨学生を育てるとりくみをすすめています。討論では、医師養成に多職種がどうかかわるか、求められることは何かを議論しました。

(民医連新聞 第1664号 2018年3月19日)

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