MIN-IRENトピックス

2018年3月20日

1日目 会長あいさつ 社会保障は人権です 実践が良い循環をつくる

 御来賓、メッセージをお寄せいただいた皆さまに心よりお礼申し上げます。被爆から七二年、人類は核兵器廃絶への大きな一歩である核兵器禁止条約を勝ちとりました。被爆地の民医連として被爆者をささえ、行動してきた広島民医連が総会現地の任を引き受けて下さったことに心から感謝します。
 理事会には、本日までにA4二〇〇ページになる討議内容や意見が寄せられています。三本の総会スローガン案に集約された二年間の方針案を練り上げ、全代議員の討議でたたかいと事業の展望を創り上げましょう。
 この二年間に四〇人の現役民医連職員が亡くなりました。全日本民医連の元役員では、肥田舜太郎名誉会長、前田武彦元事務局長、戎(えびす)博信元事務局長が亡くなりました。心から哀悼の意を表します。

 運動方針案の冒頭で「国内でも世界でも、政治を動かし、平和と人権が大切にされる、より良い社会を作り上げていく力は、一人ひとりの市民であることが明確になりました」と述べました。また、おわりに「本当に憲法を守るということは、人権を守り通すということです。誰もが不幸にならないで生き抜いてゆける日本にすること、そういう力は一人ひとりの国民しか持っていない」、子どもたちに向けた肥田先生の最後の著書から引用しました。
 今後の民医連の運動と日々の医療・介護活動を前進させる方針案全体を通して根本的に重視したのは、憲法のいう平和的生存権、健康権です。またその権利の主体は市民であることを強調しました。
 安倍内閣の異常さは、医療・介護・福祉、そして社会保障を「人権」だと見ていないことです。最近の国会で、わずかに下回った相対的貧困率を示し「貧困は改善している」とか、生活保護基準よりも相対的貧困率計算における貧困ラインが低いことを理由に生活保護費を減額する、また最近のGDPに対する社会保障支出の割合が下がっていることを「成果」と言ってのける有様です。
 昨年一一月にパリで「新自由主義に対抗し、権利としての社会保障をいかに守るか」というシンポジウムに招かれた際、EUの仕事をしていたというイタリア人に、「日本では、社会保障が削減される時になぜもっと怒らないのか。自分たちが勝ち取った権利の政府による否定ではないか」と質問されました。
 社会保障の権利性がもっと広く認識され、その財源は十分あることを明確にした運動と、地域の福祉力を高めるまちづくりが結びつくことが重要で、今総会の中心的な提案となっています。
 前総会で整理し、提起した「民医連の医療・介護の二つの柱」は、この二年間、正面から受け止められ実践がすすんでいると総括し、いっそう旺盛な実践が経営や育成、運動との良い循環をつくる起点となる、と位置づけました。
 国民の状況を「健康権保障」という観点から見て、貧困と格差、超高齢社会に焦点を合わせ、共同の営みとしての医療・介護の総合的な質を向上させることが肝であり、それが民医連の歴史的な段階、発展期をつくると考えました。「発展期」とは、診療所が全国に広がった草創期、続いて病院化・技術の近代化の時期、その後の医療・介護複合事業体を形成してきた今日という歴史的な時期という意味です。あわせてその活動の「質的変化、発展」の意味も込めています。
 五〇年のスパンで見ると、栄養や衛生面の改善、医療の発展などが相まって、日本人のすべての年齢階層で死亡率は減少しています。しかも六五歳以下では、死亡の絶対数も減少。しかし、日本人の寿命や健康状態に社会・経済的な要因で格差が生まれ、高齢化の中で八〇代をピークに死者が激増し、その傾向は今後半世紀程度続くという未経験の時代に入っているわけです。救命と疾患克服が二〇世紀の医学医療の使命であったところから、その二つに加え、人生の締めくくりの時期に、尊厳ある生活をささえることが加わる、それも相当大きな仕事となる時代に入ったと言えます。複数の基礎疾患や障害、認知症を持ち、様々な治療リスクを抱えた高齢者の医療と介護、若者の中に広がるストレス性の疾患や自殺など、身体・心理・社会的に総合的に診て、処方、対処してゆかねばならない時代、そのための体制を整え、技術的にもイノベーション、進歩しなければならない時代となったわけです。SDHも高齢者医療も今までやってきたことだからということでは済まない、いっそうの研鑽とチームワークが必要となっているという視点での議論を期待しております。

 みなさん、戦後、日本国憲法制定後、一九五〇年に生活保護法、社会保障審議会勧告、一九六〇年代に国民皆保険となり世界に例を見ない急速な寿命の延長がすすみました。民医連は、被爆者医療に象徴される人権としての医療をすすめ、今日では人権としての介護・福祉活動をすすめてきました。社会保障を縮小する政府の動きは実に四〇年になろうとしていますが、先だって名護市長選をたたかわれた稲嶺進元市長さんのメッセージにある「勝つ方法は、最後まで諦めないことです」を忘れず、奮闘する理事会の決意を込めて、あいさつといたします。

(民医連新聞 第1664号 2018年3月19日)

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