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2018年3月30日

「自分たちの病院」 育むアート

文・井口誠二(編集部) 写真・亀井正樹

 石川県金沢市の城北病院(石川勤労者医療協会)は新病院建設に向け、職員と友の会、患者、地域の人が一緒に「ホスピタルアート」を作る“部活動”を始めました。

 2月26日の夕方5時過ぎ、城北病院併設の城北クリニック多目的室に職員と友の会員ら15人が集まりました。この日は「ステンドグラス部」の“体験入部”の日。部員はそれぞれガラスを削ったり枠にはめ込んだりと、制作に没頭しています。
 椿の花を模した作品を手掛けるのは石川県健康友の会連合会金沢北ブロックの安念静枝さん。「何もかも初めての作業だけど、集中して無心で向き合うのが楽しいね」と笑います。

みんなをつなぐアート

 城北病院は現在の場所で改修と建て替えをしながら、2020年に新病院オープンの予定。玄関や待合室を飾るホスピタルアートは新病院の“顔”になる計画ですが、当初は制作の予定はありませんでした。
 制作のきっかけは2015年6月、耳原総合病院(大阪)の見学でした。城北病院副院長の三上和久さんは、耳原総合病院の玄関ホールにある「大きなハート」に目を奪われました。
 「ただその時は、『芸術家の作品。ウチとは関係ない』と思っていました。けれど、患者さんたちの力を借りて制作したと聞いて、『ウチでもやろう』と決めました」と三上さん。
 城北病院の前身は、地域の人が「私たちの病院を作ろう」と資金を募り1949年に開設した「しろがね診療所」。時代が変わっても、「地域と共に」「その人らしく生きるを支える」をモットーに医療を続けてきました。
 三上さんは「新病院を作る今が、『自分たちの病院』と再確認するチャンス。職員や友の会、患者さん、地域の人たち、全員参加のアートで、地域のみんなをつなぐ城北病院にしたい」と意気込みます。

まずは“体験入部”

 2016年2月、職員と友の会、制作を支援するNPO法人「金沢アートグミ」の3者でプロジェクトチームを結成。小児科の武石大輔医師をリーダーに、月1回の会議を続けながら「城北病院らしさとは」「アートのテーマは」「どうすれば“全員参加”になるか」などを話し合ってきました。
 こうしてステンドグラス部のほか、絵付けタイルなどを作る「陶芸部」、不要になった病院の備品をリサイクルする「工作部」の3つの“部活動”が生まれました。
 しかし、どれ1つ取っても初めて作るものばかり。そこで本格的に部活を始める前に「まず体験してみよう」と、昨年10月から1回500円の参加費で“体験入部”をスタート。参加者はプロの指導で、思い思いの作品を創っています。
 プロジェクトメンバーで病院事務職員の渡辺奈津希さんは「プロジェクトはワクワクするし、私自身も陶芸に参加して楽しかった。周りの人たちにも声をかけてみんなで参加したい」と、はにかみました。

「城北病院とは」のフレーズを テーマにまとめるプロジェクトリーダーの武石医師

「城北病院とは」のフレーズを
テーマにまとめるプロジェクトリーダーの武石医師

目指せ“全員参加”

 ホスピタルアートは、患者さんの心が安らぐ作品を目指しています。「城北病院が地域をつなぐように、アートは人と人をつなぐもの。初体験の人が多いですが、芸術作品としてクオリティーの高いものにしたい」と、「金沢アートグミ」理事長の真鍋淳朗さん(金沢美術工芸大学教授)。
 いま最も大きな課題は「全員参加」。職場会議や友の会の支部などで声を掛け、「新病院建設ニュース」で呼びかけていますが、まだ一部の人しか参加できていません。
 病院事務次長の西谷求さんは「地域の方も巻き込むためにも、まず職員と友の会に参加してもらいたい。部活が本格始動するこの春が勝負です」と決意を語りました。

いつでも元気 2018.4 No.318

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