MIN-IRENトピックス

2018年4月17日

安倍改憲ノーの力を結集させよう

 歴代政権で異常な改憲派の安倍政権は、憲法九条に自衛隊を書き込み、今年の国会で改憲案を発議し、国民投票ののち、二〇二〇年には施行しようとしています。三月二五日の自民党大会で打ち出された改憲四項目のうち、九条改憲のねらいと危険性について、市民連合主催の学習会で渡辺治一橋大学名誉教授が行った講演を紹介します。(長野典右記者)

焦点は九条改憲「戦力不保持」の無効化

 自民党の党大会で、安倍首相は「いよいよ憲法改正にとりくむときがきた」「憲法にわが国の独立と平和を守り、国と国民を守る自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打つ」と、改憲発議への強い執念を示しました。改憲四項目(①憲法九条改正、②緊急事態条項の創設、③参院選の合区解消、④教育の充実・強化)が示されましたが、明らかに焦点は九条の改憲にあります。
 自民党の憲法改正推進本部案(表)では、憲法九条の二を追加し、必要最小限度の実力組織として自衛隊を保持すると明記されていました。自衛隊を「必要最小限度の実力」と解釈し、憲法九条二項の戦力にあたらないとするこれまでの政府の見解を踏襲したものです。また「自衛のための」を入れず、集団的自衛権の解釈をめぐる論争を回避しました。
 しかし三月二二日の修正案(表)では、「必要最小限度の実力」を削除、「自衛の措置をとること」と明記しました。これは、戦力不保持を規定する憲法九条二項の無効化で、事実上、二項の削除と同様の効果があります。「必要最小限度の実力」を削除することで、自衛のための戦力を合憲とし、「自衛の措置」をうたうことで、フルスペックの集団的自衛権行使へ道をひらくことになります。安倍政権は追い詰められたにもかかわらず、より反動的な案を提案しました。国民の反発は必至です。

最後のとりで「憲法はまだ死んでいない」

 政府は、一九五四年の自衛隊創設以来、「憲法は独立国家として固有の自衛権を持つことは否定していない」「自衛のための必要最小限度の実力部隊を設けることは憲法九条に違反しない」と解釈してきました。また国民の運動の力によって、憲法九条は軍事大国化の歯止めとして自衛隊の活動をしばってきました。そのため自衛権行使の三要件は、①急迫不正の侵害、武力攻撃の発生、②排除する他に手段がない、③必要最小限度の実力行使、としてきました。
 さらに、安保闘争による岸内閣の倒壊で、自民党は改憲を断念し、その後の内閣では「自分の任期中には改憲しない」状況が九一年まで続きました。自衛隊の活動に対する制約として、五四年の国会決議による海外派兵禁止、七二年の政府解釈による集団的自衛権の禁止、自衛力による制限として、長距離ミサイルなど攻撃的兵器の保持は許されない、としてきました。
 しかし、企業活動のグローバル化やアメリカからの圧力、国連平和協力やPKO活動のための自衛隊の海外派兵など、憲法九条による自衛隊の活動制約を突破するための改憲の圧力が大きくなってきました。九一年から二〇〇四年までの憲法改正の第二の波では、四三もの憲法改正案が発表され、自衛のための軍隊を持つこと、国際社会の平和のために軍隊を使うことができることが共通に掲げられていました。その後、一四年七月の集団的自衛権の行使容認の閣議決定、一五年九月の戦争法の強行可決で、自衛隊の活動の制約が緩和されました。
 ただ、戦争法反対運動の盛り上がりの中で、「自衛のための必要最小限度の実力」の最後のとりでである、「海外での武力行使はしない」という一線を越えることには、内閣法制局官僚経験者からも「憲法の枠を越える」と指摘されました。戦争法の全面発動は違憲とされ、「憲法は死んでいない」ともいえます。

安倍政権を倒し改憲を断念させる

 これまでの改憲阻止、自衛隊の海外派兵阻止の運動は、憲法の壁を維持しています。自衛隊に対する最強の歯止めは戦力をもたないと定めた憲法九条です。安倍改憲案は、私たちの運動との力関係の中で、憲法九条の歯止めを突き崩すために出てきたものです。したがって、安倍改憲案をつぶせば彼らには札はありません。憲法が生きる日本をつくり、朝鮮半島問題を解決する上で憲法改正を打破したことは大きなメッセージになります。
 現在、森友問題や公文書の改ざんで、安倍政権の支持率は下落し、改憲スケジュールは大幅に遅れているともいわれています。しかし、毎日新聞の三月の世論調査でも、「憲法九条の一項と二項はそのままにして自衛隊に関する条項を追加する」が三八%、「憲法九条の二項を削除して自衛隊を戦力と位置付ける」の一二%を上回りましたが、「自衛隊を憲法に明記する必要はない」は一八%にとどまっています。九条改憲についての大きな世論調査に変化はありません。安倍政権が続く限り、改憲の動きは必ず継続します。
 安倍改憲の危険性を学び、森友ノーと安倍改憲ノーの力を結集して、安倍政権を倒すことが緊急の課題です。そのためにも、三〇〇〇万人署名を成功させ、安倍改憲を断念させる運動をさらに強めていきましょう。


9条をどう変えようとしている?

現行の条文

 9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

自民党の9条改憲案

憲法改正推進本部執行部案(新設)

 9条の2第1項 我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つための必要最小限度の実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
 第2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

3月22日の修正案(新設)

 9条の2第1項 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
 第2項 (執行部案と同じ)

(民医連新聞 第1666号 2018年4月16日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ