いつでも元気

2005年7月1日

元気スペシャル 核不拡散条約NPT再検討会議に向け4万人がアピール

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セントラルパークで大集会(撮影・森住卓)

廣田憲威(全日本民医連理事)

 歴史はじまって以来の出来事がニューヨークで起こりました。五月一日、核兵器の廃絶を求めて、セントラルパークに世界中から四万人もの人が集まったので す。翌日から国連で開かれる第七回核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた世界市民の意思表示です。
 被爆六〇年のことし、日本からも千人以上が参加。うち民医連関係の九一人をふくめ、原水爆禁止日本協議会(原水協)は八三〇人という大代表団でした。

セントラルパークへ

 セントラルパークに向け、国連近くのパレード出発地点を正午に出発。朝からの小雨も上がり、青空が広がり ました。各国の参加者が思い思いのスタイルで核廃絶をアピールします。日本原水協の代表は、パレードの最中も、積極的に沿道の市民に「いま、核兵器の廃絶 を!」の署名を訴えました。民医連の参加者は民医連オリジナルの英語版「ピースうちわ」を配り、大好評でした。
 集会では各国の参加者が次々に登壇。
 日本からは、広島の秋葉忠利市長が平和市長会議の各国市長らといっしょに登壇、「核兵器とのたたかいに私たちは勝てるし、勝たなければならない」と訴え ました。長崎の伊藤一長市長も「核兵器廃絶の道筋をつけよう」と強調しました。

署名504万筆に迫る

 日本原水協の高草木博事務局長は、日本からの署名が五〇三万八一〇八筆になったことを報告し、「日本政府はアメリカの核戦略を容認し憲法改悪まで企んでいる。ブッシュ大統領にすべての核兵器の廃絶を求める」と強調。今夏の原水爆禁止世界大会への参加を呼びかけました。
 集会は四時間以上に及び、日本での集会とは一風変わって出入り自由。最初から最後まできまじめに参加したのは、日本人だけだったかもしれません。熱意と感動は十二分に伝わりました。
 集会前後には、民医連の反核平和集会、日本原水協主催のシンポジウム、国連でのNPT再検討会議の傍聴、各国政府への要請など、目いっぱい行動しました。
 NPT再検討会議は五年ごとに開かれますが、前回二〇〇〇年の会議では、国際世論に押され、五大核保有国(米露英仏中)も「完全な核兵器廃絶への明確な 約束」を全会一致で合意しました。新たに核兵器を持つ国を生み出さないだけでなく、いま持っている国も核兵器を廃絶するという、画期的な合意です。

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国連本部で日本原水爆被害者団体協議会が開いた
初の原爆展

戦争する国の恐怖を実感

 しかし、〇一年に「9・11」事件がおき、事態は一変。核兵器の脅威は増大しています。ことしは、前回の約束を確認する上でも、きわめて重要な会議として世界的に位置づけられました。

私は初めてのアメリカでしたが、入国時には顔写真と両手の人差し指の指紋をとられ、指紋は百年保存。いたる所で手荷物検査がある。驚きました。戦争する国の恐怖を目の当たりにした思いです。

 代表団のとりくみを通じて、核兵器廃絶と非暴力こそが平和への確実な道筋であることを再認識しました。ま た、核兵器廃絶を真に推進する新アジェンダ連合や非同盟諸国のとりくみからすると、唯一の被爆国である日本政府の態度はほんとうにお粗末だと実感します。 今回の感動を全国の職場や地域に反映させ、完全な核兵器の廃絶へ力を尽くそうと、確認しあいました。 (写真も筆者)


CPPAC 東北アジア地域会議

憲法9条と9条を支える世論に高い支持が

馬奈木厳太郎

 「武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ(GPPAC)」というプロジェクトが、世界を一五の地域に分け、世界中で同時進行で進んでいます。
 アナン国連事務総長の勧告で始まったもので、NGOや研究者など市民社会が主体となり、紛争予防のための課題を提起し、その具体化を求めていきます。七 月にニューヨークの国連本部で開催される国際会議で国際提言がまとめられます。

 
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GPPAC東北アジア地域提言採択記念シンポジウム
(2月、東京・国連大学)

 ●紛争予防に重要な理念
 日本は、韓国、中国、朝鮮民主主義人民共和国、モンゴル、また地域として極東ロシアと台湾、香港などとともに東北アジア地域に属しています。今年二月 に、東京で東北アジア地域会議が開催され、地域提言が全会一致で採択されました。
 提言では、非核化や軍縮、「過去の克服」平和教育、マイノリティ(少数者)の人権、持続可能な経済など包括的な内容が盛り込まれ、なかでも日本国憲法の 平和主義が、東北アジアの紛争予防にとって重要な理念であることが強調されました。

 ●隣人の声に耳を傾けて
 現在、日本では改憲をめぐる議論が盛んです。憲法九条を時代遅れとする見解も少なくありません。東北アジア地域会議では、「有事法制」を制定し、アメリ カに追随して自衛隊をイラクに派遣した日本が、もし改憲したなら、その次はどうなるのか、強い懸念が表明されました。
 しかし他方で、憲法九条とそれを支える世論への支持は高く、九条が東北アジア地域における紛争予防メカニズムとして現実的な機能を果たしていると一様に評価されました。
 憲法を変えるかどうかは日本国民の権限です。ただ、改憲の効果が国内にとどまらないのであれば、私たちは隣人の声にももっと耳を傾ける必要があるのではないでしょうか?

 ●信頼こそ安全と生存の基礎
 日本国憲法の前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という一文があります。国境をこえた 市民レベルでの信頼関係が、安全と生存の基礎だというこの理念こそ、GPPACの核心だと私たちは考えています。その確信と共感は、確実に拡がっていま す。
 日本国憲法の理念に、世界がようやく追いついてきた――GPPACのとりくみを通して、そんな印象を実感しているところです。

 ●市民が政府や国連を動かす
 東北アジアでは日中・日韓や朝鮮半島の問題などで緊張関係があり、日本国内では、拉致事件や最近の「反日」デモなどにしても、極めて内向きの言説が流さ れています。そうした時期だからこそ、GPPACは、いわば市民版「六者協議」のような役割を担いたいと考えています。
 この間、「対人地雷禁止条約キャンペーン」や発展途上国の債務軽減を求める「ジュビリー2000」などに見られるように、市民主体のとりくみは徐々に影 響力を強めています。市民が国境をこえて声をあげ、各国政府や国連を動かしたのです。市民一人ひとりの「想い」が「カタチ」になれば世界を動かしていける ――そういう時代になってきています。
 GPPACの動きに注目し、参加していただければ幸いです。
(札幌学院大学講師)

■各国代表の声を載せた『隣人から見た憲法九条』(三百円)があります。
問い合わせはTel03-3363-7561/
E-mail:gppac@peaceboat.gr.jp
(渡辺・松村)まで

いつでも元気 2005.7 No.165

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