いつでも元気

2018年4月30日

まちのチカラ・栃木県茂木町 
汽笛が響くゆずの里

文・写真 牧野佳奈子(フォトライター)

1932~1942年に約300両つくられたというC12型が町を駆け抜ける(茂木町提供)

1932~1942年に約300両つくられたというC12型が町を駆け抜ける(茂木町提供)

 SL列車で知られる真岡鐵道に乗って、最終駅がある栃木県茂木町を目指しました。
 ポッポー! と大きな汽笛が鳴り響くと、沿線でたくさんの人が手を振って歓迎してくれる、あたたかい町。
 茂木町のさまざまな魅力をご紹介します。

ド迫力のSL「もおか」

 真岡鐵道の蒸気機関車は、茨城県筑西市の下館駅から茂木駅まで、毎週土日と祝日に1往復ずつ運行しています。現役のSL「もおか」に乗り込み、心持ち緊張しながら車両の空席へ。しばらくしてポーッと大きな汽笛が鳴ると、車窓からも白い煙が流れていくのが見えました。一気に気分が盛り上がります。
 乗客は誰もが幸せそうで、まるで昭和の映画を観ているよう。沿線からSLを眺める人たちも一様に笑顔で手を振ります。これほど多くの人に幸福感と一体感をもたらすSLは、やはり未来に残すべき貴重な財産なのだと実感しました。
 茂木駅に着いたら、徒歩18分の「道の駅もてぎ」へ。敷地のすぐ近くに線路があり、今度は復路のSLを“見て”楽しめます。案内所で撮影スポットを聞いて向かうと、出発の1時間以上前にもかかわらず多くのカメラマンが。聞けば、走っているSLを間近で撮れる貴重なスポットとして、鉄道愛好家の間で有名なのだとか。
 私もカメラマンに混じってスタンバイ。しかしSLの迫力は想像以上に凄まじく、目の前で噴出した蒸気に圧倒されて思わず悲鳴を上げてしまいました。SLは遠くから眺めるのが良いようです。

道の駅グルメ全国2連覇

 「道の駅もてぎ」には、全国的に注目を集めているラーメンが。2年前に始まった道の駅のグルメ選手権「道―1グランプリ」で2連覇した「もてぎのゆず塩ら~めん」。地元産のゆず果汁を鶏と豚の合わせ出汁にブレンドした看板商品で、土日には特設テントを設けて対応するほどの人気ぶりです。
 茂木町役場地域振興課の堀江順一さんに“勝因”を伺うと、「ゆず塩ラーメンは、“女性が1人でも気軽に注文できる”をコンセプトに開発しました。さっぱり感やヘルシーさが多くのお客様に受け入れられたのではないでしょうか」と言います。
 注目を集めているのはグルメだけではありません。道の駅もてぎは全国に1117ある道の駅のうち、「地域活性化の拠点として特に優れている」と認定されている“全国モデル”の1つ。ラーメンに使われている調味料など、道の駅が自ら地元の野菜を加工し6次産業化していることが評価されました。
 「もともと茂木町はタバコ葉の栽培が盛んでしたが、昭和50年代後半に衰退。転用作物としてゆずが選ばれました。今はその他の野菜や果物も農家から買い取り、約40種の加工品を作っています」と堀江さん。
 道の駅が一括加工することで、少量多品種でも統一感のある商品が生産可能とのこと。雇用も増え、道の駅を運営している第3セクター「株式会社もてぎプラザ」では現在120人が働いています。
 「小さな町だからこそ、みんなで町づくりができる。新商品を作ってヒットすれば、みんなが町に誇りを持てます。道の駅にできることはまだまだありますよ」と話す堀江さんの生き生きした表情が印象に残りました。

女性にも大人気の「もてぎのゆず塩ラ~メン」

女性にも大人気の「もてぎのゆず塩ラ~メン」

サーキットにツーリング

 茂木町は、アトラクション施設などを併設するサーキット「ツインリンクもてぎ」でも有名です。毎年10月に開催されるモーターサイクルの世界レース「MotoGP」の前日には、約1000台のバイクが町中をパレードし、町民が旗を振って応援するのだとか。
 レースのほかにも、子ども用のアスレチックや自然体験プログラムなど、一般客が1日中楽しめる施設も充実。株式会社モビリティランドツインリンクもてぎ広報宣伝催事課の上野圭美さんは、「レース観戦とアトラクションが両方楽しめる施設は他にないと思います。かっこいいレーサーやマシンを間近で見て、サーキットの迫力や臨場感を家族みんなで楽しんでもらいたいです」と話します。
 土日には町の真ん中を抜ける国道123号線を、ツーリングのバイクや自転車がひっきりなしに通ります。国道123号線は道のアップダウンやカーブが適度にあり、交通量が比較的少ないため走りやすいとのこと。東京から日帰りでツーリングに来る人も少なくないそうです。
 町の東部を流れる那珂川の清流沿いを風を切って走れば、さぞ爽快なことでしょう。鎌倉山の展望台からも、町全体に響き渡るエンジン音が鮮明に聞こえました。

モーターサイクルの世界レースMotoGP(ツインリンクもてぎ提供)

モーターサイクルの世界レースMotoGP(ツインリンクもてぎ提供)

触れるカメラ博物館

 道の駅から車で15分、約1500台のカメラを展示している博物館があると聞き向かいました。館長の増野茂さんが5年前に自宅をリフォームして開いた、手作りの博物館です。
 まずは蛇腹式のカメラ約450台と写真集約3000冊が展示されている別棟「写真はうす」へ。所狭しと並べられた展示品の中で一際目を引いたのは、1900年代に製造された米国製の蛇腹式カメラとボックスカメラの計12台。「今はもうフィルムがないので使えませんけどね」と話しながら、増野さんがクラシックカメラの仕組みを教えてくれました。
 増野さんはカメラ販売を手掛ける「ペンタックス」(現リコーイメージング)に勤務する傍ら、カメラを収集したそう。博物館にはペンタックス歴代モデルや海外輸出用モデル、特別記念のゴールドモデルなど、希少価値のあるカメラがズラリ。その他、ニコンF3などの古き良き名機も。ブランドの数は200以上に及び、その全てを実際に触りながらカメラ談義できる、カメラ好きにはたまらない空間です。
 「今はスマートフォンでもきれいな写真が撮れるので、フィルムカメラは二束三文の時代。でもそれより、写真をプリントしない人が増えたことが残念です。データはそのうち埋もれて顧みられなくなるので、やはり見える形で思い出を残すことが大切だと思います」と増野さん。
 月に30人ほどが訪れるという同博物館。カメラに囲まれて語り合う思い出話は、いくら時間があっても足りなさそうです。

ロチェスター・オプティカル社のポケットプレモを手に取りながら説明する増野さん

ロチェスター・オプティカル社のポケットプレモを手に取りながら説明する増野さん

■次回は特別編。第14回全日本民医連共同組織活動交流集会の会場周辺(神奈川県横浜市)を紹介します。


 まちのデータ
人口
1万2527人(2018年2月1日現在)
おすすめの特産品
そば、ゆず、エゴマ、和菓子など
アクセス
真岡鐵道茂木駅下車。宇都宮ICから車で約70分、水戸ICから約40分
問い合わせ先
茂木町観光協会
(茂木町役場地域振興課内)

0285-63-5644

いつでも元気 2018.5 No.319

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