MIN-IRENトピックス

2018年5月22日

フォーカス 私たちの実践 粘膜ブラシによる口腔ケア 沖縄協同病院

粘膜ブラシが口の環境改善に有効102人に導入し検証

 歯の有無にかかわらず、口のケアは粘膜ブラシでの清掃が効果的だと言われています。しかし明確な根拠はなかったため、沖縄協同病院のリハビリテーション室でその効果について検証しました。歯科衛生士の仲程尚子さんの報告です。

 沖縄協同病院は二八〇床の急性期の病院です。平均在院日数は一二・五日、リハビリが関わるのも急性期の患者さんです。リハ室の言語聴覚士から、発話や嚥下の訓練の際に口腔内のケアが不十分な患者が多く、歯科衛生士の配置を望む声が出ていました。二〇一〇年から二人の歯科衛生士がリハ室に常駐するようになりました。

細菌が減り、潤う

 無歯顎の患者の口腔ケアは、ガーゼやスポンジブラシでの清拭が一般的です。一方、粘膜ブラシでの清掃が有効という意見があるものの、根拠は曖昧でした。そこで、二〇一六年二月~一七年二月までに入院した無歯顎の患者一〇二人(男性三二人、女性七〇人、平均年齢八八・六歳±七・三歳)に対し、粘膜ブラシによる清掃の効果について検証しました。
 効果は、①細菌数、②唾液湿潤度、③口唇閉鎖状況と舌可動域、の三点で評価。介入初回時に検査を実施し、主に看護師が一日一回、粘膜ブラシを使用したケアを行い、二週間後に再検査しました。
 細菌数は綿棒で舌背の一㎝ほどを三往復し、細菌カウンタで測定。初回検査でレベル4(細菌数三一六万~一〇〇〇万個)以上だった六一人の二週間後の検査では、初回で三二人だったレベル5(細菌数一〇〇〇万個以上)以上は一〇人に減り、「良好」とされるレベル3以下(三一六万個以下)に改善した人は三一人でした。
 唾液湿潤度では、介入前は半数以上の五三人が唾液量ゼロでしたが、二週間後には一二人に減り、「ゼロ~三ミリ未満」「三ミリ以上」が八割以上に。安静時に口が開いた状態の人は三五人いましたが、二一人に減りました。
 Aさん(八六歳、男性)は、狭心症、パーキンソン病、慢性腎不全などの既往でADLは全介助、食事は経口摂取。尿路感染で入院した三日目から粘膜ブラシを使用。口が閉じるようになり唾液量も増加、発語が明瞭になりました。
 Bさん(九七歳、女性)は認知症、骨粗鬆症、慢性気管支炎で、ADLは全介助、食事は経口摂取。慢性心不全で入院。二週間後、細菌数レベルは5から1に改善、唾液量は減りましたが、舌の可動域が広がりました。
 細菌数の減少は予想していたものの、唾液量の増加と、それに伴い口が閉じやすくなる傾向は、予想以上でした。家族からの「口が閉まらず、口の中が乾燥してしまう」という相談は少なくありません。二週間のケアで口が閉じるようになったり、入院時は言葉が不明瞭だった患者が、退院時にははっきりと「ありがとう」と言ってくれたなど、目に見える変化があり、家族にも喜ばれています。

ケアのしやすさも

 粘膜ブラシでのケアを行う看護師、言語聴覚士にアンケートも実施しました。粘膜ブラシの操作性、効率性ともに「とても良い」「良い」が九割、九七%が粘膜ブラシを「すすめたい」と答えました。自由記載欄には、「唾液が出るようになった」「舌苔や痰が取りやすい」「傷がつかない」などのほか、「口腔ケアの拒否が減り、負担が軽減した」などの意見が。以前は、口腔ケアをしようとすると固く口を閉ざしていた患者が、粘膜ブラシを導入してからは自ら口を開けるようになった例もありました。

* * *

 今回、粘膜ブラシによる口腔清掃は、口腔内環境や口腔機能の改善に有効である可能性を明らかにできました。また職員にとっても、ケアがしやすく、効果が実感しやすいとの回答が得られました。今後もより良い口腔環境を提供できるよう、業務負担軽減も視野に入れながら、多職種で連携していきたいと考えています。

(民医連新聞 第1668号 2018年5月21日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ