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2018年6月5日

健康ニーズに応えるため 新たな総合化への挑戦 根岸京田・医療介護福祉部長インタビュー

 今期、部の再編成で、新しく医療介護福祉部が発足しました。前期の到達点と、今期の課題について、根岸京田医療介護福祉部長に聞きました。(長野典右記者)

●前期は「2つの柱」の普及と実践 

 前期の医療部は、「医療・介護活動の新しい2つの柱」を打ち出し、具体化と実践にとりくんだ二年間でした。介護・福祉部や医師部との協同で行った、二回の拡大県連医療活動委員長会議は大きな役割を果たしました。二〇一七年は、ギャリー・ブロックさん(カナダ・トロント大学准教授)から医療従事者による貧困介入をはじめ、健康格差対策と社会的処方、SDH教育の講演を受け、ワークショップを行いました。トップ管理者地域包括ケア交流集会では、埼玉・幸手モデルの講演を受け、地域包括ケアについて具体的なイメージを膨らませ、実践を本格的にすすめる機会になりました。
 「2つの柱」の普及と実践で、第一の柱に関しては貧困と健康格差に焦点を当て、SDHの視点に基づく医療を実践しました。第二の柱については、初めて医療と介護の協同で安全交流集会を開催。またQI推進士セミナーを開催し、診療の質向上をすすめるとりくみを開始しました。二〇一五年に発足したJ―HPHネットワークの活動に民医連も積極的にかかわり、カナダに学んで「日本版貧困評価介入ツール」の開発にとりくんでいます。
 介護・福祉部は、介護・福祉分野での「たたかいと対応」の総合的推進、「『民医連の介護・福祉の理念』を活動の土台に」を基本に、介護・福祉責任者会議で総括と方針を提起。情勢と介護ウエーブ、地域包括ケアのほか、一六年度は総合事業と経営、一七年度は介護の安全性、経営、ケアマネ分野を重点としました。

●高齢化と在宅医療・介護の広がりに対応 

 前期までの医療部と介護・福祉部を合体させ、医療介護福祉部として運営する方針とした背景には、患者・利用者の高齢化と在宅医療・在宅介護の広がりで、医療と介護の相互乗り入れがすすんできたからです。
 第一の柱である無差別・平等の地域包括ケアの実現をめざすには、医科、歯科、介護に加えて保険薬局の役割も重要です。医療介護福祉部には歯科医師と薬剤師の理事も加わり、地域の健康を守る課題について総合的に検討する体制としました。
 新専門医制度をはじめ、日本の医療は専門分化、細分化の方向にあります。
 超高齢社会を迎え、多様化・複雑化する地域の健康ニーズに応えるためには、総合的な視点が不可欠です。国連のめざす持続可能な開発目標(SDGs)の視点、SDHの改善に向けた視点、HPH活動の視点などが大きなヒントとなるでしょう。「新たな総合化への挑戦」と言えるのではないでしょうか。

●無差別・平等の地域包括ケア実現の政策的発信 

 医療介護福祉部の課題の一つ目は、無差別・平等の地域包括ケアを実現するための政策的な発信です。
 キーワードは、健康格差、健康権、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」、遠隔診療、地域包括ケア病棟、地域における口腔ケアや栄養管理、在宅での看取り、訪問看護、リハビリ、総合事業、などです。個別課題の検討や見解づくり、法人や事業所が事業や業務に展開できるようにします。
 二つ目は「2つの柱」の実践の交流と、教訓の普及です。超高齢社会、少子化、多死社会、肩車社会、単身・夫婦のみ世帯や認知症の増加、貧困の深刻な広がりなどを迎える時代の「質の高い無差別・平等の地域包括ケア」の内容、「我が事、丸ごと地域共生社会」とどう対峙していくのかを、地域の実践例から考えていきます。
 三つ目は、まちづくりへの貢献を意識することです。住み慣れた地域での生活をささえる介護、介護をささえる医療、それに共同組織やNPOによる地域の福祉力を高める活動との協同、さらに教育、行政、商店街との連携がすすむとどのようなまちづくりが可能になるのかなど、検討と実践を積み重ねていきたいと思います。

●医療と介護、入院と在宅の連携 

 課題の具体化として県連医活委員長会議は、集会の獲得目標を明確にし、対象、内容、時期を検討していきます。安全、倫理は引き続き医療と介護の協同でとりくみ、QIや学術活動などでの協同を検討していきます。HPH活動は、日本HPHネットワーク(J―HPH)と連携しながらさらに普及をすすめます。
 民医連的な学術研究活動、二〇一八年は四〇歳以下2型糖尿病研究(二〇一二~一三年)の追跡調査、J―HPHカンファレンスや各種学会での発表も重視します。また一年先送りした医療活動調査の実施について検討します。
 介護分野では、「地域医療構想+地域包括ケア」という政策枠組みのもとで、病床展開に対応した在宅分野の総合的強化、求められる介護の機能などの検討が課題です。実践のポイントは連携です。医療と介護、入院と在宅という二重の連携をどうすすめていくのか、民医連らしい連携論・多職種協働論の検討、整理が必要です。
 介護・福祉分野の最大のネックは職員不足の慢性化、深刻化。影響は、運動、実践、事業展開、人づくりのすべてに波及しています。職員確保の推進・辞めない職場づくりなど各地の経験や教訓の交流、実効性のある処遇改善、需給施策の実施を求める運動が必要です。
 実際は手探り状態ですが、前期の医療部、介護・福祉部の理事や歯科理事、薬剤師理事が加わった意味にこだわり、焦らずに運営していこうと考えています。


〈医療・介護活動の二つの柱〉
第一の柱‥「貧困と格差、超高齢社会に立ち向かう無差別・平等の医療・介護の実践」
第二の柱‥「安全、倫理、共同のいとなみを軸とした総合的な医療・介護の質の向上」

(民医連新聞 第1669号 2018年6月4日)

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