介護・福祉

2018年6月19日

ひめは今日も旅に出る (6)「笑顔も希望も、自分でつくる」

 退院に備えて、入院中に介護保険を申請。認定調査まで済ませ、狭いわが家に介護用ベッドを搬入し、いざ退院。
 2016年11月、職場の理解を得て仕事に復帰。ほどなく要介護2という通知が届く。ケアマネさんと顔合わせして、浴室に設置するバスリフト、長距離歩行が困難になってきたため車椅子をレンタル。まだ先だとたかをくくっていたが、あっという間に介護保険のお世話になる。
 案の定、入院中の体力低下とALSの進行が重なり、これまで通りの日常生活を送るだけで疲れ果ててしまう始末だった。着替え、身じたく、車の運転、3階の職場までの階段、仕事、買い物、料理、入浴、排泄。難なくできていたことが、ひとつまたひとつと、できなくなっていく。切なかった。つねに誰かの介助なしには生活が成り立たない。ついこの間まで、自分の思う時に思う場所へ、フラフラと出掛けていたのに。急激な身体の変化に驚愕(きょうがく)しながら、人体の神秘さを感じずにはいられなかった。
 仕事はそれでも続けたかった。まだやり残したことがある。何より仕事のない生活が想像できなかった。ALSに24時間支配される生活が怖かったのかもしれない。ほんのひと時でも、ALSのことを忘れたかった。
 同時に、私の生活からあらゆる自由がなくなっていく寂しさや不安に押しつぶされそうになった。この頃には早くも呼吸苦が出現し、睡眠時に人工呼吸器(NPPV)を装着するようになった。頭の片隅では時間は有限とわかっていたが、急に人生に限りがあると突きつけられた。1日1日が愛おしく、生きることの意味を噛みしめる日々。
 確かにALSは残酷な病気だ。でも、ALSに支配されて冴えない顔で過ごすのはまっぴらゴメン。ALSとともに生きていくために必要なのは笑顔と希望。私が希望を持ちながら笑顔でいるために、やりたいことリストを作成した。
 もうすぐ、きっと、ALSは治る病気になると信じている。6月21日は世界ALSデー。


文●そねともこ。1974年生まれ、岡山県在住。夫・長久啓太、猫2匹と暮らす。2016年、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断をうける。

(民医連新聞 第1670号 2018年6月18日)

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