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2018年6月19日

これでばっちり ニュースな言葉 種子法廃止で 食卓はどう変わる?

 日本の食文化を下ざさえしてきた種子法が、今年4月1日に廃止になりました。どんな問題があるのか、農民運動全国連合会事務局長の吉川利明さんが解説します。

農民運動全国連合会事務局長

こたえる人 吉川 利明さん

 種子法(主要農作物種子法)廃止法案は、昨年政府が「都道府県が開発した種子は、民間企業が開発した品種よりも安く提供することが可能だから、競争条件が同等とはなっていない」との理由で、唐突に国会に提案しました。わずかな審議時間で採決を強行、自民、公明、維新の賛成多数で強行成立されました。
 これは規制改革推進会議による「種子法は、民間の品種開発意欲を阻害している」との攻撃、意向を受けたものです。

■果たしてきた役割

 種子は人類共有の公的な財産であり、もっとも基本的な農業生産資材です。種子供給の過不足が農業生産を直接左右し、種子の品質の良否が農作物の生産性や品質の良否に直結します。ですから、どの国でも種子政策が農業政策上重要な位置づけとなってきました。
 種子法は、一九五二年にサンフランシスコ講和条約が発効し、日本の主権が回復した年に制定されました。戦後の食糧難に、国が責任をもって国民に食料を供給するために、国や都道府県の種子生産に対する公的役割を明確にし、地域に合った優良品種銘柄を多く開発し、農家に安価に販売するなど大きな役割を果たしてきました。
 種子法は、高温多湿で南北に長い日本列島で、地域にあった品種開発をささえた制度で、これまで日本の米・麦・大豆で多様な品種をもたらし、私たちの食生活を豊かにしてきました。
 お米は、伝統的なコシヒカリ、あきたこまち、ひとめぼれに加え、ゆめぴりか(北海道)、青天の霹靂(へきれき)(青森)、つや姫(山形)、森のくまさん(熊本)など、各県で開発した新しい品種がどんどん登場し、食卓を豊かにしています。大豆もそれぞれの土地にあった多様な品種があり、煮豆や枝豆のみならず、豆腐や納豆、味噌などの食べ物になり、私たちの食文化の幅を広げてきました。

■種子供給が不安定に

 種子法の廃止は、主要食料を安定的に供給するためにこれまで築き上げてきた制度、体制を弱めます。米・麦などの優良種子の供給が不安定になり、必要なときに手に入らなくなってしまうおそれがあります。
 種子産業が大きく発展してきたアメリカでは、大豆は一九八〇年の時点で公共品種が七割を占めていましたが、九八年までに一割に減少し、現在は、モンサントやデュポンなどのバイオ企業四社で八割近くに達し、そのほとんどは遺伝子組み換えです。
 このアメリカでの前例を踏まえれば、日本でも公的育種、種子事業が短期間のうちに、国内大手や巨大多国籍企業の種子ビジネスに置き換わってしまう可能性があります。

■野党が復活を共同提案

 一方で、各都道府県はこれまで種子の関連事業を、おおむね維持する方向ですが、新潟、兵庫、埼玉の三県は、種子の安定的な生産・供給体制を維持する条例を制定。北海道、宮城、岩手、群馬、長野、愛知、滋賀などで、現行の体制を維持しつつ、要領・要綱などを定めて対応しています。
 さらに、種子法廃止にともなって万全の対策を求めるなどの意見書が五〇以上の県・市町村議会から国会に提出されています。
 これらの動きを背景に、「主要農作物種子法を復活させる法案」を野党は共同して今国会に提案しています。各都道府県に種子条例制定を求めるとともに、野党と共同をすすめ「種子法の復活」の世論を広めましょう。

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(民医連新聞 第1670号 2018年6月18日)

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