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2018年7月3日

フォーカス 私たちの実践 ポリファーマシーのとりくみ 和歌山生協病院 患者の意思確認と根拠にもとづいたアプローチ

 ポリファーマシー(多剤併用)による医療費負担や薬物相互作用を回避するためのとりくみがすすんでいます。第一三回学術・運動交流集会での和歌山生協病院の薬剤師・栗栖香寿(くるすかず)さんの報告です。

 和歌山生協病院は一般病床一四九床の病院で、薬剤師の数は五人です。
 二〇一六年四月の診療報酬の改定で、薬剤総合評価調整加算が新設され、精神病棟に入院し減薬する場合と、一般的な入院患者の入院前の薬剤で、頓服や服薬履歴の浅いものを除いた六種類以上から二種類以上を減薬できた場合に二五〇点の加算がとれます。
 近年ポリファーマシーが注目され、多剤併用で医療費負担の増大や服薬コンプライアンスの低下などさまざまな問題点があります。薬の中にはリスクを高めるものもあり、スタート&ストップなどが作成され、減薬の場合に利用し慎重に選択することが重要です。

 ■継続状況を調査

 スタート&ストップは高齢者の薬物療法の安全性を高める目的でガイドライン化されています。高齢者に使用を強く推奨される薬剤がスタートとされ、例えばワクチンなどです。対照的に中止を考慮すべき薬物がストップとされ、転倒などのリスクを高めてしまう睡眠薬や、腎臓の機能に影響を与えてしまう利尿剤が挙げられます。
 そこで、改定を受け、薬剤総合評価調整加算の算定、中止や継続状況の調査を行いました。
 朝礼時間の一部を使って減薬の検討会を始めた二〇一六年一〇月より前の四カ月と後の四カ月で、算定できた件数と薬剤数の比較の結果と、その後の推移、また減薬された薬剤の薬効別分類の結果と、減薬された薬剤がスタート&ストップに掲載されている薬剤に該当した割合を報告します。
 まず、薬剤数の比較では、検討会前で七剤でしたが、検討会後では一一五剤に。件数の比較では、検討会前の四カ月では二件のみ、検討会後の四カ月では二九件になりました。この検討会を実施し医師に働きかけると、減薬を検討してくれる医師もいました。
 次に検討会開始四カ月以降の薬剤数は、検討会を継続しているため増加しています。さらに件数の推移は増加傾向ですが、検討会後四カ月は件数を徐々に伸ばしていました(図1)。その後、入院患者の減少で算定件数が減少している月も出てきています。
 減薬された薬剤の薬効別分類では、最も多かったものが消化器系の薬剤で、セルベックスや酸化マグネシウム。次が循環器系で、三番目に睡眠薬が減薬されています(図2)。この消化器系薬剤が最も多かった理由としては一時的な症状に対して処方、投与されているのではないかと考えます。
 スタート&ストップの該当割合でみると、減薬・中止された薬剤は四二二剤で、約三〇%がストップとして挙げられている薬剤でした。またスタートに該当する薬剤は八%でした。
 スタートとして位置づけられる薬剤の中止では、内服困難の例などが考えられました。また、ストップ該当の薬剤で酸化マグネシウムの他にNSAIDsや利尿剤が多く、高齢になるにつれ現れるさまざまなところの痛みへの対応や、循環器系の負担を軽くする目的での使用が考えられました。

 ■チーム機能の発揮を

 今回の調査で、ポリファーマシーの可能性を秘めた患者は少なくないことが分かりました。
 高齢者では、複数の疾患、おくすり手帳の活用法が不十分、認知機能や筋力の低下が見え始めますが、睡眠薬を使用し転倒や健忘のリスクを高めている可能性もあります。リスクを回避する目的で減薬を考え、患者の意思を確認し、医師への根拠に基づいたアプローチ、他職種からの情報提供をいかして、相互に信頼関係を築きながら見極めて適正使用を促進することが大切であると感じました。
 中止後のフォローが不十分で、再入院の際に薬剤が増えている人もいて、薬薬連携などで維持につなげたいと思います。また、看護師や理学療法士など他職種の意見も取り入れ、チームとして機能できる機会も増やしていきたいと思います。
 また、主治医が処方する薬を減薬することに抵抗がある患者にどういった方法でアプローチし、本人に望んで減薬してもらうかなど一人ひとりの対応も課題です。

(民医連新聞 第1671号 2018年7月2日)

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