医療・看護

2018年7月17日

相談室日誌 連載446 生活困窮で服薬できず 脳梗塞を再発したAさん(静岡)

 四〇代後半のAさんから無料低額診療事業の相談を受けました。Aさんは一〇年前の脳梗塞で自営業を廃業し、妻子と別れ、独居でした。身体障害者手帳があり、生活保護を利用していました。半年前にハローワークの紹介で障害者雇用として働き始めました。月に十数万円の収入を得るようになり、生活保護は廃止となりました。
 ところが、生活保護を廃止した途端に以前の家賃滞納、税金滞納、携帯端末の借金の支払いが始まりました。給料日直後には、手元に現金はほとんど残っていませんでした。そのためAさんは一カ月前の受診を最後に、かかりつけ医から薬をもらうことができなくなっていたそうです。
 当院の外来受診後にAさんと面談をしました。Aさんからは「できるだけ生活保護にはなりたくないです」という意思表示がありました。これまでAさんには市の生活支援センター、生活保護課、障害福祉課、収税課、社会福祉協議会、障害支援のNPO法人などさまざまな機関が関わっていました。関係機関と連絡をとりつつ、無料低額診療事業を利用しながら債務整理をしていくことを提案し、Aさんも承諾しました。
 しかし、信じられないことが起きてしまいました。Aさんが当院を受診して間もなく、脳梗塞を再発し、B病院に入院してしまったのです。私はB病院に行き、担当のソーシャルワーカーに情報提供をしました。Aさんが中断せずに脳梗塞予防の薬を飲み続けていたら、今回のような再発は起きなかったのではないか? そう思うと悔しさがこみ上げてきました。結局、Aさんは望んでいなかった生活保護を再開することになりました。
 生活困窮とは、疾病や予期しないライフイベントが重なっている状況です。その人が必要としているタイミングで、関係機関とつながりながら総合的に状況を整理し、援助することの重要性を再認識しました。

(民医連新聞 第1672号 2018年7月16日)

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