介護・福祉

2018年8月21日

相談室日誌 連載448 高齢者の生活崩壊を防ぐための支援(島根)

 Aさんは、糖尿病で外来に通院している七〇代男性です。もともと、生活保護を受給しながら夫婦二人で生活していましたが、ある日「妻が家出した」と相談に来ました。妻の家出の原因はAさんからの暴力でした。Aさんは妻に帰ってきてほしい思いがありましたが、しばらくして離婚が成立。生活保護は廃止となり、妻と離婚する前から飼っていた愛犬との生活となりました。自営業だったため、国民年金のみ(月八万円弱)の収入で生活は厳しく、借金もありました。養護老人ホームの入所も、愛犬と離れたくないとの理由で拒否していました。
 そんな中、Aさんは脳梗塞を発症し、市内の病院へ救急搬送。幸い軽度だったため、短期間で自宅退院となりました。退院後は生活面、体調面の不安からかSWに頻繁に連絡が入るようになり、Aさん宅を訪問しました。妻が家出して以降、徐々に家の中が荒れていき、すでにゴミ屋敷状態でした。清掃業者も利用できず、病院スタッフでボランティアチームを組み、Aさんの自宅清掃を実施しました。
 自宅の環境整備と同時進行で、介護認定申請に動きました。申請はSWが代行しましたが、認定調査に同席する家族がいません。Aさんと別れた妻の間には子どもがおらず、Aさんの兄弟姉妹も高齢の人ばかり。同じ市内に住む本人の姉(八〇代)と連絡を取り、SWが同席する了承を得て調査に至りました。現在は要介護2の認定がおり、訪問介護とデイサービスを利用しながら生活しています。生活環境が整っていくにつれてAさんから「これからもがんばって犬と暮らしたい」と前向きな言葉が出るようになりました。
 低所得、病気、離婚、独居など高齢者の生活崩壊の危険性はどこにでも転がっており、単純に「自己責任」だけでは片づけられません。今回は病院スタッフの理解と協力もあり、ここまでの支援ができました。SWは、自尊心を尊重しながら生活を見続け、支援していくことが大切だとあらためて実感しました。

(民医連新聞 第1674号 2018年8月20日)

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