医療・看護

2018年9月18日

相談室日誌 連載450 不法滞在者の処遇改善と医療の平等を考えた事例(群馬)

 Aさんは、肝硬変、バセドウ病で、入院した四〇代前半のフィリピン人女性です。二〇年前に、日本人と結婚し、三週間で離婚。ビザが切れ、仮放免となりました。その後、元内縁夫と出会い、四子を授かりました。元内縁夫とは別れ、現在の内縁夫と出会いました。
 仮放免を更新していないため不法滞在となっており、内縁夫はAさんがビザを持っていないことを知っていました。内縁夫は「行政へ相談しても、ただフィリピンへ帰らされるだけで、何もしてくれない」と思っていました。不法滞在のため、収入もなく、無保険でした。Aさんの病状は悪化。外国籍の生活困窮者支援を行っているNPO団体へ連絡をとり、フィリピン大使館や市役所、入国管理局へ相談すると、「身元調査中のため、何もできない」という返答。その後も、フィリピン大使館へ何度も連絡を取りましたが、「身元調査中。日本のように住民票がないので、身元確認に難航している」という返答。保険証確保のため、弁護士と相談し、内縁夫の勤め先に扶養できるよう交渉することになりました。
 その後、元内縁夫、長女、長男が病院に来院し、Aさんと面会しましたが、翌日、Aさんは亡くなりました。遺体は、日本で火葬され、内縁夫が遺骨を預かることになりました。
 受診が遅れたことについて、内縁夫へ確認した中で、「もう少し早く受診すればよかった」という発言がありました。私は、内縁夫の責任だけではないと思います。「無保険で医療が利用しづらい」「不法滞在が判明し、フィリピンに帰らされる」などの気持ちもあったと考えます。行政も「身元調査中で、何もできない」という返答で、解決策が見出せない状況でした。日本は、誰もがいつでも平等に医療を受けられる社会ではありません。このままでは、今後も同じような事態が起きる可能性があります。NPO団体だけでの支援には限界があり、国や行政で、不法滞在者の処遇改善や医療が受けられる対策を考えていく必要があります。

(民医連新聞 第1676号 2018年9月17日)

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