民医連新聞

2003年3月21日

私の意見〈5〉 見解「『医療事故』、『事件』と私たち民医連の立場」に

見解「『医療事故』、『事件』と私たち民医連の立場」への感想・意見をひきつづき識者に聞きます

日本医労連 田中 千恵子さん

春闘要求に「医療事故なくせ」日本の医療機関すべての“課題”

 「医療事故をなくす」ことは、医療に携わる者すべての責務です。そして、労働組合には、現場で自らが「防止する」努力だけでなく、経営者にも事故を起こさないための手だてを打つように求める、という役割もあると考えています。

 今年の春闘では「医療事故をなくし安全な医療体制の実現」という要求を掲げました。政府は今まで医療事故を防止するシステムづくりをしてきませんでした。労働組合も「医療事故をなくせ」という声を強くあげてこなかったということもあります。

 私たちは、「医療事故防止のための第三者機関をつくれ」という要請を厚生労働省に行っています。「あまりにも医 療事故が多すぎて、対応がたいへん」という返答でしたが、最近、第三者機関の必要性が議論されています。医療事故防止対策についてはすでに欧米での実践で 「どういうシステムをつくれば事故を減らせるか」のノウハウはあります。問題は「事故をなくそう」という政府の対策が弱いこと。医療事故の防止には 1S(SYSTEM 組織・制度)づくり、3M(MAN人、MIND心、MONEYお金)が必要と言われています。そのためには財源も必要で、政府の対策 が遅いのはそのこともあります。

*   *   *

 医療事故・事件をめぐっては、医療労働者と患者さん、国民との間に感覚の乖離(かいり)が生まれてきていると思 います。国民の思いは「とにかく医療事故を起こさないで、安全な医療を受けたい」というもの。医療現場の労働者は「こんなに忙しい現場ではいつ自分が医療 事故を起こしてしまうか分からない」という感情があります。

 このギャップを埋めること、国民といっしょに「医療事故をなくそう」「安心して働ける職場をつくろう」という運 動が求められています。春闘では、地域に出て患者・住民と話し合い、アンケートなどで要望を聞き、住民の要求と私たちの要求がいっしょになるような運動を しよう、経営者には事故防止の対策を要求していこうと呼びかけています。

 「地域に出よう」という提起にこたえた動きははじまりました。山形県では、地元紙に一〇万部の「市民アンケー ト」を折り込み、四五九通を回収。安全対策を保障する財政措置や診療報酬の引き上げなどを行政側に求める声や、医療労働者に厳しい努力を求める声なども寄 せられています。また、外来窓口や他産業の労働組合に呼びかけたアンケート四七五三枚を集約し、運動に生かしています。

 またなぜ「経営者への働きかけ」か?

 経営者によっては事故防止への反応が鈍く「精神論」だけをふりかざし乗り越えようとしているところも少なくない からです。「インシデント・レポートだけ出させ、事故原因の解明や、システムそのものに手を入れず、責任は職員個人に押しつける」といった低レベルの対応 しかしていないところも残っています。事故の責任が個人に押しつけられるだけでは、教訓化されず、同じ誤りが繰り返されるだけです。

*   *   *

 民医連が出した「見解」については、事故防止の方向として評価されるものだと思います。「事故」と「事件」の両 方が述べられていますが「医療事故」は「起こりうるもの」であり、「事件」は「おこしてはいけないもの」だと分けて考えなければいけません。はじめにも述 べましたが、「医療事故をなくす」という課題は、「民医連だから」とか「特定機能病院だから」とかは関係なく、医療労働者に課せられた責務であり、国民的 な課題です。いま民医連が色いろなデマや攻撃にさらされていますが、これは「医療事故をなくそう」という私たちの努力や国民の願いに背くものであり、断じ て許せません。同時に「民医連だからがんばってとりくもう」というものではなく、日本のすべての医療機関が同じような状態に置かれており、すべての医療労 働者が同じ思いを持っており、同じように努力をしています。安全な医療体制の実現に向けてごいっしょにがんばりましょう。

(民医連新聞 第1304号 2003年3月21日)

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